サントリーオープンでナイスショット!?

漫画家/弘兼憲史

 僕はゴルフレッスンの連載とか、ゴルフ雑誌の取材とかを結構受けているので「すごく年季の入ったゴルフのうまいやつ」という認識を持たれているようなのですが、実はさっぱり。ゴルフを始めたのは36歳でした。20代の頃は「ゴルフ」といえば“ブルジョアのスポーツ”というイメージが強かったので、ヘソを曲げてやらなかったんです。

ところがゴルフ漫画の連載を始めることになり嫌々クラブを握ったら、すっかり虜になりました。なぜなら普通の人より飛ぶんです。出るコンペ出るコンペ、しょっちゅうドラゴンを取ってました。そんなとき、サントリーオープンのプロアマに出ないかという話が来て参加をしたんです。当時の開催は、習志野カントリークラブでした。プロのトーナメントは木曜と金曜が予選ラウンド、土曜と日曜が決勝ラウンドとなっていて、プロアマは水曜。四人のメンバーの内訳は、トーナメントのプロが一人、タレントや有名人が一人、そしてお客さんや関係者が二人となっていて、とりあえず僕は有名人枠でした。で、一緒に回ったのは、当時大活躍されていた飯合肇プロでした。

初めての経験で驚いたのは、まずラフ。当然のことながら、トーナメントと同じ状況でかなり深い。プロは芝の状況とかを調べながら回るんでしょうが、アマチュアには難しい。さらにギャラリーの数がすごい。人に見られながらのプレーは、ものすごく緊張するものです。ましてプロアマを見に来る方なんかは有名人目当てですから、マナーを知らない人も多い。グリーン周りに敷物を敷いて弁当なんか食べているんです。コントロールのいいプロなら、その人たちの脇を通過させたり頭の上を越えたり、気にもならないんでしょうが、僕なんかにはそれほどの技術はないですからね。「どいてください」と頼む度胸もなく、一打遠回りしてグリーンを狙うんです。そんなに気を使いながらプレーしているのに、ギャラリーのおばちゃんたちは有名人を探しているんですよ。僕のことを見て「あれ誰?」「この組、誰が有名人なの?」と露骨なささやきまで聞こえるんです。島耕作のお面でも付けて出るべきだったか……。

ちょっと所在ない気持ちで回っていたんですが、その日もドライバーがよく飛んでいました。何発か300ヤードくらいはいっていたでしょうね。飯合さんを何回かオーバードライブして、その都度、ギャラリーも「オオ~」と歓声を上げていました。そんな流れの中で途中の茶店に入ると、ジャンボ尾崎さんや直道さんが休んでいたんです。で、飯合さんが「すごいアマチュアがいる」と僕の話をしていた次のホールで、バックスイングしたときに、何と目の片隅に僕を見つめるジャンボさんが立って見ているのが映ったんですよ。いいところを見せようとマン振りしたクラブの先は、チョロったボールが……。「ナイスショット」。ジャンボさんが笑って消えて行きました。

漫画家/弘兼憲史(ひろかね・けんし)
山口県出身。早稲田大学法学部卒。松下電器産業(現パナソニック)勤務を経たのち、1974年に漫画家としてデビュー。現在、『島耕作』シリーズ(講談社)、『黄昏流星群』(小学館)を連載するほか、ラジオのパーソナリティとしても活躍中。
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