令和の今でも「大奥」ドラマ化され続ける深い意味 刑事ものや医療ものに匹敵する鉄板コンテンツ

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ただ、よしながの漫画は、映像化されたときははじまったばかりだったため、“男女逆転”ばかりが注目されていた。が、2021年まで連載が続き、大奥の最後まで描ききったとき、その印象はかなり違ったものになった。

平賀源内が中心となって赤面疱瘡も治療法を発見、再び男性が政の中心になっていく。NHKが最後まで映像化したことで、男女逆転大奥が、女性男性も隔てなく、誰もが平等に個別の能力や希望に沿って生きられる世界への希求だったことがわかるのだ。

「大奥」を作り続ける意味

1980年代、男女雇用機会均等法が生まれ、女性が社会進出するようになったものの、『大奥』のように女性の力が強くなる時代にはほど遠く、いまだに、女性の社会的に不利な立場にある。

平成30年版の男女共同参画白書(概要版)によると、国会議員に占める女性の割合は、平成30年2月現在、衆議院10.1%(47人)、参議院20.7%(50人)、内閣府男女共同参画局の資料では、令和5年、衆議院員の女性は10.0%、参議院員は26.0%となっているような状況である。

だからこそ、『大奥』を作り続ける意味があるのかもしれない。フジテレビが『大奥』を伝統芸として作り続ける一方で、TBS が新機軸としてよしながふみの男女逆転版を映像化したことでいったん『大奥』人気も落ち着いたかと思ったら、2022年、NHKが、TBS では一部しか制作しなかったよしなが版『大奥』を、2021年に発売された最終巻までドラマ化することに挑んだ。

おりしも、よしなが版『大奥』が、彼女のもうひとつの人気作『きのう何食べた?』と併せて再ブームに。そして再び、フジテレビで『大奥』の開始と、大奥映像化の歴史が長くて複雑。まさに、家光の時代から200年近く続いた、大奥の歴史のようである。

まあ、単純に、衣裳が華やかで目に楽しい。燃えるような恋の物語では、男女問わず輝いて、気持ちが高まる。女性同士のちょっと意地悪なくらいの心理戦が痛快でストレス解消できる。というように、極めてエンタメ性に富んでいることが、一番の息の長い人気の要因ではあるだろう。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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