富士通とパナの合弁、「半導体再浮上」に挑む 京セラから転じた西口CEOが再建策を語る

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――日本のシステムLSI事業の敗因をどう分析しているのか。

富士通とパナソニックにかぎらず、日本勢は自社のテレビやパソコン向けの供給者として生まれた。最終製品が世界で勝っていたら、今のような状況はない。最終製品が負けたから、苦戦に追い込まれた。

では外販すればいいと思うが、それにはマーケティング力が決定的に欠けている。市場のニーズを見極めて、どういう性能やどういう価格で設計・開発すればいいのか、その力をあらためて高める必要がある。

――マーケティング力は今後、どう高める?

従来のカスタム品だけでなく、世界的に主流の汎用品にも今後は力を入れる(写真:HIROMICHI / PIXTA)

まずは市場で何が必要とされているのか、考える体制をつくることが必要。新会社には8つの事業部を設けたが、その事業部を横断した「マーケティング統括部」を設けた。同部門はニーズを調査するだけでなく、ソリューションを提案する部隊に仕上げていく。

各事業部にマーケティング機能を持たせるため、市場に近いところに拠点を設けている。たとえばITインフラ設備向けにシステムLSIを提供する「ハイパフォーマンスSoC事業部」は、米カリフォルニア州に事業センターを設置。

スマートデバイスなどの普及で需要が高まっている光ネットワーク向けシステムを手掛ける「ネットワークSoC事業部」も、顧客に近いイギリスにセンター設けた。市場に身を置き、何が必要とされるかを考えることが重要だ。

台湾勢の”次世代テレビ”に照準

――ターゲットとする市場はどこか。従来どおりカスタム品中心か、汎用品にシフトするのか。

まだ、どちらかにシフトすると決めるころまでいっていない。すでにカスタム品、汎用品の両方を手掛けているが、それでいいと思っている。ただ従来のような1社1品というカスタムは、やるべきではないと考えている。カスタム品では、コアの汎用技術をベースに、A社、B社、C社にどうカスタムするか。そういう形を追求していく。

一方、汎用品には本当のマーケティング力が問われる。市場のデータを集めて分析するだけでなく、市場の先を読んで、自分の責任で開発し、売れる製品を提案していきたい。

――具体的にはどのような業種を顧客と捉えているのか。

8つの事業部ごとに顧客ターゲットは異なる。たとえば映像や音響向けの「ビジュアルシステム事業部」は、これまで主に日本のテレビ関連を手掛けていたが、今後は台湾でニーズが高まると考えている。

台湾メーカーは、これまでパソコン中心に生産をしてきたが、市場は縮小しており、スマートフォンの生産もさほど多くない。おそらく台湾勢が考えているのは、インターネットにつながる次世代テレビ。また日本のテレビメーカーも、台湾勢に開発・生産を含め委託するところが増えると予想される。その際に使われるチップなどにかかわっていきたい。

6月2日から台北で開かれているコンピューター見本市にも出展しており、今後現地メーカーに提案していくつもりだ。

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