だから日本人は「英語で雑談」できない! 脳科学者と英語教育者が語る、英語上達法

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安河内:私も長い間英語を勉強していて、同じような経験があります。昔、あるカフェでネイティブの友人が、Your part-timer is very dexterous. (君のところのアルバイトはとても器用だね) と言ったんです。

単語帳を開いてABC順で覚えるよりも、この時聞いたdexterousという単語は、その時のイメージと一緒に、一発で覚えましたね。

脳科学的に正しい、丸暗記しない覚え方

加藤:私もまったく同じで、31歳のときに、MRIのパイオニアであるローターバー博士(後の2003年にノーベル生理学賞受賞)に、新しい脳機能イメージングの論文が認められてアメリカに渡りました。英語論文が認められていても、その時の英会話のスキルはゼロでした。しかし、日常的にほかの研究者と、英語でMRI専門の用語を何度もやり取りするわけです。そういう「場面記憶」が頭に残るとね……。

安河内:第3の鉄則が出てきましたね……。「経験と結びつけて記憶しろ」ということでしょうか?

加藤:そうです。「declarative memory =陳述記憶」といって、「出来事」に関する記憶は、比較的長い時間残りやすいんですね。特に、ドラマのように時間軸に沿って体験が記憶されると、思い出しやすいわけです。

安河内:ということは、好きな映画のドラマの一場面で、好きな俳優さんが話す英語というのは覚えやすいと言えるのでしょうか。

加藤:覚えやすいし、なにより、親近感がある。自分が好きな記憶というのは、よく思い出しますよね。つまり再生率が高い記憶ですから、より何度も思い出し、その分さらに記憶が強くなります。

たとえば、授業で習った英語というのは、授業が終わると思い出しませんよね。しかし、英語は、授業と授業の合間に伸びるわけです。

アメリカで研究しているときは、四六時中英語で考えるわけですよ。患者さんを診ながら、「Magnetic Resonance Imaging (MRI)」とか「sequence=撮影プログラムなどの順序」とかっていう単語がぐるぐる回るんです。「自分専用の単語」が、何度もリフレインされることで、脳の中の神経細胞が繋がって、「英語の道路」ができるわけです。

安河内:先生、それはつまり、一度、脳番地がつながって「英語の回路」ができると、それまで苦労していた英語が、脳に入りやすくなるということですか? そして、脳に英語が入りやすくなることで、英語学習に拍車がかかる……?

加藤:入りやすくなって、拍車がかかるし、記憶することも楽になります。

そして、一度その回路を使うと、脳はまた同じ回路を使いたくなるんです。つまりゲームでも一緒ですね。一度、パチンコや競馬で勝つと、同じようなやり方で、もう一度勝ちたいと思うというような。

安河内:その回路を作る作業としては、記憶したことを反復することによって、その回路も強くなるわけですか。

加藤:そうなんです。記憶の回路というのはブドウの房みたいなものなんです。始めは実がない軸だけですが、何度も使っていくうちに、枝分かれてしていって、また別の英単語の知識と結びついて、どんどん軸が太くなり、ブドウの実がもりもりとついてくるわけです。こうなってくると、記憶が固定化されます。

つまり、「英語のエピソード記憶」を積み重ねていくうちに、ほかの記憶と結びついて、より多くの単語を確実に身に付けていくことができるわけなんです。

↓  ↓  ↓

鉄則その3:英単語は「エピソード記憶」で覚えろ!


(次回に続く)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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