マクドナルドと「ライバル外食」を分析する 「独り負け状態」に歯止めはかかるか?

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さらに注目すべきは、一過性の損失をまとめた「特別損失」の中にある「減損損失」77億円です。採算がとれない店舗については、その貸借対照表上の価値を下げなければなりません。こうして出た損失が減損損失です。

また、「上海福喜問題関連損失」として22億円が計上されています。これは賞味期限切れの鶏肉問題の発覚に伴って発生した、原材料の廃棄費用、品質管理の強化を告知するための費用です。

以上のことから、最終損益が前の期は51億円の黒字だったのが、この期は218億円もの最終赤字を計上しました。11年ぶりの純損失となったのです。営業段階でも最終利益でもマイナスという、かなり厳しい状況に陥っていることがわかります。

300億円も現金が流出!だが財務にはまだ「余裕」

続いて、貸借対照表(9~10ページ参照)を見てみましょう。これだけ業績が悪化していても、マクドナルドは抜群の安全性を維持しています。中長期的な安全性を示す自己資本比率(純資産÷資産)は78.6%ありますから、かなり高い水準です。まだまだ財務余力はあるのです。

ただし、苦境が若干現れてきている部分があります。資産の部にある「現金及び預金」と「有価証券」の項目です。この2つを足し合わせますと、前の期は601億円あったのが、この期は286億円まで減少していますね。およそ300億円の現金が流出しているのです。

これと併せて有利子負債を調べますと、長期借入金が5億円のみ。銀行とのお付き合い程度の金額しかありません。しかしこれ以上、手持ちの現預金が減りますと、今後は借り入れを増やしていく可能性があります。

つまり、業績自体は悪化していますが、財務内容は依然として抜群にいい状態ですから、次の戦略を打つ余力は十分にあるのです。戦略の内容次第では、復活の可能性もあるでしょう。

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