【産業天気図・損害保険】震災関連の準備金取り崩しが寄与し、経常益は劇的改善。ただ海外展開加速など急務

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11年4月~11年9月 11年10月~12年3月

損害保険業界の景況感は、2011年4月から12年3月まで一貫して「上向き」となりそうだ。震災関連の異常危険準備金が取り崩され、12年3月期の経常利益は劇的に改善する。ただ主力の自動車保険は停滞が依然続いており、海外展開やグループ内統合によある構造改革などが急務でもある。

大手損害保険3メガグループとも前11年3月期は大幅経常減益(1社は経常赤字)となった。この最大の要因は東日本大震災に伴う地震保険(火災保険の特約)の関連費用。地震保険は個人向けは政府支援等があるため直接的な影響はないが、工場や営業所などを対象にした企業向けはリスクを自前で引き受けている。

再保険会社への出再分を除き、支払いは損保各社の負担であり、各社の保険金支払い予定額は東京海上ホールディングスが915億円、MS&ADインシュアランスグループホールディングスが627億円、NKSJホールディングスが579億円。11年3月期には予定額とほぼ同額の支払備金繰り入れを行っている。

一方、12年3月期には、実際の支払い本格化に伴い、損害率が50%を超えた部分の金額に関して、今まで積み立ててきた異常危険準備金が取り崩され、これが業績にプラスに働く。東京海上日動火災保険では単体の支払い予定額819億円に対し、12年3月期に420億円を、MSADでは損保会社合算ベースで220億円、NKSJでは同様に538億円の取り崩しを見込む。要は、震災に関連して各グループとも1000億円内外の経常利益改善要因が発生することになる。さらに、各グループとも有価証券評価損が解消されることも大きなプラス要因だ。

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