"大谷の犬"注目で、ブリーダーが抱く「強い懸念」 人気犬種になったがゆえに不幸な道を辿る犬も

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大谷選手のそばにいた犬、コーイケルホンディエは16世紀ごろ、オランダのカモ猟やアヒル猟で活躍していた犬種です。ふさふさした尻尾を振っておとりにして鳥をおびき寄せるという、ユニークな狩猟犬で、名前は「カモ猟の犬」という意のオランダ語から付けられています。

しかし、20世紀に入り戦争が始まると、他の犬種と同様に減少の一途に。戦後に見つかったのは、わずか25匹でした。

愛好家たちの努力により、1942年から犬籍簿が作られ、コーイケルホンディエの繁殖が再開されました。1971年にオランダで国犬として犬種登録され、その後、海外への輸出が行われるようになります。日本に初めて輸入されたのは、1999年とされています。

原産国のオランダにある協会では、各国にいるこの犬種のデータ(血統や遺伝病の有無など)をしっかり入手・管理し、遺伝病が発生しないよう近親交配を避けた繁殖を徹底しています。

原産国オランダ以外の国では今でも数が少なく、繁殖者も少ないため、血統が限られています。絶滅の危機を逃れたこの犬種の「歴史」や「血統」、そして「子犬の健康」を守るため、利益目的の安易な繁殖を防御しなければならないのです。

一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)のサイトに記載されたコーイケルホンディエの性格・特徴は、「陽気で機敏、自信に溢れ、十分な忍耐力やスタミナもある。気立てがよく、用心深いが、うるさくはない。この犬種は忠実で、おおらかで、友好的である」とされています。

筆者は以前、この犬種の飼い主から「猟犬とは思えないほど穏やかな性格だが、活発さと運動量は猟犬らしく、十分に必要となる。1回1時間以上、1日2回程度の散歩や運動が好ましく、飼い主にもそのタフさと時間的余裕が求められる」と聞いたことがありました。

人気上昇で悪徳ブリーダーが増加

人気が上昇すると、その犬種や猫種の需要が高まり、悪徳ブリーダーやにわかブリーダーが乱繁殖をしたり、新たにその犬種や猫種を入手して繁殖を始める、利益目的のブリーダーが増加します。

そのようなブリーダーは知識もないうえに、血統や遺伝病の有無などは気にも留めないため、近親交配や遺伝病のリスクを高め、必然的に不幸な子犬や子猫を増やすことになります。危惧する点は、そこにあります。

健全なブリーダーは近親交配を避けるために、事前に近交系数(個体がどの程度の近親交配の結果生産されたものであるかを示す数値)を割り出し、問題のない組み合わせでの交配を行っています。また、遺伝病についても親犬・親猫の遺伝性疾患検査(DNA検査など)を行い、問題のない親犬・親猫同士での交配を行うことで、その犬種や猫種に懸念される遺伝病をできる限り避ける努力をしています。

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