劉会長が語る「TSMC」が台湾を離れない根本理由 アメリカ首脳はあの手この手で誘致をしてきた

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窓のない、航空機の格納庫ほどもある建物は、スマートフォン、航空機、スーパーコンピューター、その他あらゆる電子機器の内部にある小さな頭脳、マイクロチップを製造するために24時間稼働している。

アメリカとその同盟国の政治指導者たちは、中国との貿易戦争において、台湾外に生産施設を建設するようTSMCに働きかけてきた。そして中国は、ハッキングや知的財産の窃盗から数千億ドルの投資まで、あらゆる手段を使ってTSMCに対抗しようと懸命に努力してきた。

米中の「争い」に巻き込まれてきた

アメリカが中国の半導体技術の進歩を妨げようとする中、TSMCはその渦中に巻き込まれてきた。2020年、TSMCは当時同社の2番目に大きい顧客であった中国の巨大テック企業ファーウェイ向けの出荷を打ち切った。劉会長は、TSMCはアメリカの技術に依存しているため、選択の余地はなかったと話す。

「理解はできるが、支持するかしないかに関しては、何も言うことはない」と、会長は述べた。

劉会長は、台湾の優れたチップ製造能力が中国の軍事行動を抑止し、アメリカからの支援をもたらすという「シリコンの盾」の考えを否定した。どちらも台湾のチップを必要としている。

「中国が半導体を理由に台湾を侵略することはない。中国が半導体を理由に台湾を侵略することは”決してない”」と会長は述べた。「これは本当にアメリカと中国次第だ。つまり、双方が望んでいる現状をどう維持するかということだ」。

TSMCはアリゾナに400億ドルを投資し、最先端チップより1〜2世代前のチップを生産する工場を2つ建設した。同社は今月、CHIPS法補助金の申請書を提出する見込みだと、劉会長は述べた。

アリゾナ工場建設は遅々として進まず、同社は数百人の台湾人技術者を投入してプロセスを急いでいる。先月には操業開始予定日を1年遅らせて2025年とし、高コストと経営上の課題に直面している。TSMCとアメリカ人労働者の間には、文化の違いをめぐる社内の緊張が表面化している。

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