資生堂「中国で不買運動」処理水問題に続く大懸念 藤原社長「今後も中国は重要」日本は構造改革へ

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ECではプロモーション時期のたびに購入するブランドを切り替える層が多いため、インフルエンサーに宣伝してもらえるかでメーカーの売り上げは大きく左右される。中国では毎年11月11日の「独身の日」に開催されるEC上の大セール「ダブルイレブン」が大きな山場となるが、資生堂は春節を迎える来2024年第1四半期(1~3月期)あたりまで処理水関連の影響は続くとみている。

中国市場は高い成長性と市場規模で、日本の化粧品メーカーを魅了してきた。ヘアケアなども含む中国の化粧品市場は、2022年に10兆円超と10年前から2倍以上成長しており、日本市場の2倍以上の規模となっている(イギリスの調査会社、ユーロモニター調べ)。

藤原憲太郎社長COO(左)と魚谷雅彦会長CEO(右)(記者撮影)

2018年から2022年まで資生堂の中国地域CEOだったのが、今年1月から社長COO(最高執行責任者)を務める藤原憲太郎氏だ。前社長で現会長CEO(最高経営責任者)である魚谷雅彦氏とともに、中国事業を売上高で日本に並ぶ屋台骨へと成長させてきた。

だが現在は処理水問題に限らず、中国事業そのものの先行きまでも不安視されている。

崩れ始めた「メイドインジャパン神話」

最大の懸念は、中国現地メーカーの台頭だ。コロナ禍で日本メーカーがもがく間、彼らは着実に力をつけてきた。

「中国メーカーは海外ブランドの良いところを吸収しつつ、自国に合った商品を低コストかつ高スピードで開発している」と、越境EC関連のプラットフォーム事業等を行っているNOVARCAの濱野智成社長は指摘する。これにより「中国メーカーの品質が向上し、コストを考えると採算が合わなくなってきた」(中小化粧品メーカーの幹部)という声もこぼれる。

品質をアピールするだけの戦い方は一段と厳しくなる。中国政府は化粧品の成分開示義務を強化しており「メーカーにとって命と言える、商品のレシピを開示せよと要求されているようなもの」と、日本のOEMメーカー首脳は技術流出を懸念する。

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