Aマッソ加納「後悔は芸人の宿命なのかもしれない」 芸人がこの世で一番最高な仕事だと信じてる

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芸人を目指した要因の大部分は、高校時代の環境や経験にある気がする。

教室内で驚くほど無敵だった高校時代

通っていた学校は大阪市立の商業高校で、私が入った商業科には男子生徒が3人しかいなかったため、ほとんど女子校のような状態だった。しかし真の女子校ではなく、商業高校であったのがミソだ。

親が「かわいい我が子に変な虫がついたら大変」と言って入学させる箱入り娘だらけの私立女子校とは違い、親が「早くそろばんと簿記覚えて働かんかい」と言って放り込む高校だから、品性のかけらもなかった。そして生徒はなぜかうっすら自嘲的な雰囲気があり、誰かが耳にしたある有名歌手の「私の歌の恋愛観は、商業高校の子にはきっとわからない」というような発言を知っても「確かに~!」とケラケラ笑える奴らばかりだった。

さらに、卒業したらできるだけラクで近所にある福利厚生の整った職場で働きたいとしか考えていない生徒が多く、逆にその野心のなさによって、高校生活をラフに楽しみ尽くそうという空気もあったのかもしれない。高校生活は将来に向けたなにかの前段階ではなく、ただ高校生活であると捉えていたようだった。

思春期という一番異性を意識する年齢のはずである私たちは、教室内で驚くほど無敵だった。私が授業中におならをして「ごめん屁こいた」と言っただけでみんなむせるほど笑ってくれたし、休み時間に、誰かが黒板の横に置いてあるラジカセでシンディ・ローパーの『Time After Time』を流しはじめ、曲の間に各々おしゃべりをしながらも「Time After Time」の部分だけは全力で走って集まるという、わけのわからないノリに夢中になったりもした。

とはいえ年頃の高校生の話題はもちろん恋愛が中心なわけで、例にもれず私たちも毎日そこかしこで色恋話に花を咲かせていたが、女だらけの場ではそれはあまりにも開けっぴろげに行われた。クラスメイトの2人が教室の端と端で昨日の他校の男の子とのデートについて事細かに話しているのを、担任の先生が業を煮やして注意するときも「授業中にしゃべるな!」ではなく「そんな話聞かすな!」と内容の過激さに言及していた。クラスにいる3人の男子は、みんなそろってまっすぐに板書された文字を見つめていた。

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