サンマ漁獲枠、大幅減でも漁業者は「感謝」? 海外との争奪激化し、試行錯誤する日本

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今回の漁獲枠の大幅削減は、漁業の現場にどのような影響を与えるのか。ある水産庁OBは「実態は何も変わらない」と断言する。

ここ10年の推移を見ると、実際の漁獲量は漁獲枠の4~8割ほどにとどまっている。つまり、漁業者が目いっぱい取っても、漁獲枠には届かない状況が続いているのだ。

今回26.4万トンまで漁獲枠が削減されても、もともと近年は20万トン前後しか取れていない。漁獲枠が実態に即していないため「もっと取ってもよい」ということになり、漁獲制限の体を成していないとの指摘も聞かれる。

世界的には、漁獲枠は実際の漁獲量と同水準になるよう設定されるのが通例とされる。たとえばカナダでは、ズワイガニの漁獲枠(2014年期)が9万8253トンのところ、実際の漁獲量が9万6404トン。漁獲枠の98%を消化した計算だ。漁期の前に漁獲量のメドが立ち、漁業者や流通業者は販売価格を決めやすくなる、というメリットもある。

より厳格な管理も、場合によっては必要に

水産庁は「漁獲枠がABCの範囲内に抑えられている以上、実際の漁獲量との乖離があっても、問題になるとは思っていない」と説明する。

ただ日本は今後、国際的な資源管理の枠組みを主導したいとしている。漁獲枠が大きすぎる状態が続けば、国別の漁獲量の割り当てを議論する際に、他国に制限を要請しにくくなる可能性もある。まず、日本がより厳格な資源管理の姿勢を見せることも、今後必要になるかもしれない。

「週刊東洋経済」2015年6月6日号<1日発売>「核心リポート02」を転載)

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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