国家公務員給与削減を機に、人事院勧告制度を見直せ

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 いずれにせよ、国と地方の公務員給与削減により、震災復興財源として1兆数千億~2兆円近くは捻出できるのである。

震災復興に当たっては、このほかにも、子ども手当の完全廃止など、財源捻出の余地がまだかなりあることも忘れるべきではない。

労使交渉で給与決定を

さらに、今回の国家公務員の給与削減をきっかけに、公務員給与の決め方自体をも見直すべきである。

政府は、国家公務員の給与を削減するための給与法改正案とともに、人事院を廃止して労使交渉で給与を決める仕組みを盛り込んだ国家公務員制度改革関連法案を今国会で審議する。労使交渉の前提として、公務員に労働基本権の一つである協約締結権も与える。

基本権のうち、スト権付与には慎重な議論が必要だが、協約締結権は認めるべきだ。労使関係が専門の今野浩一郎・学習院大学教授は、「まずは協約締結権を与えてみて、自立的労使関係が確立できるか様子を見るべきだ」と言う。

これまで国家公務員の給与水準は、例年8月上旬の人事院勧告を踏まえて政府が決めてきた。戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の指示によって、公務員は協約締結権やスト権を制限され、代わりに第三者機関である人事院による勧告制度がつくられたことによる。

人事院は民間給与と比較して公務員給与の適正水準を勧告してきた。地方でも、都道府県や政令指定都市の人事委員会が人事院に準じた勧告を行い、それ以外の市町村もこの勧告に沿って給与を決めてきた。国や地方の財政状況とは関係なく給与が決まる仕組みだ。

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