国家公務員給与削減を機に、人事院勧告制度を見直せ

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 加えて提案したいのは、地方公務員(地方議会議員を含む)の給与削減である。この非常時に、国家公務員給与だけを削減して地方公務員はそのままというのでは、理屈が通らないからだ。

もう一つの理由は、震災とは直接関係がないものの、危機的な状況にある日本の財政を立て直すには、増税だけでなく、歳出削減も避けて通れないからである。国の一般会計の二大歳出項目は、社会保障関係費と地方交付税だ。交付税の多くは、地方公務員の給与に充当される。井堀利宏・東京大学大学院教授は、「歳出の二大項目にメスを入れなければ、財政再建は難しい。交付税を減らすには、地方公務員の人件費を削減するしかない」と指摘する。

地方公務員は数が多いだけに、削減で捻出できる金額は、国会議員や国家公務員よりかなり大きくなる。

11年度の地方財政計画によると、全国の地方公務員の総人件費は21兆円強。ここから退職金などを除いた給与は約18兆円。これが削減対象金額だ。また、削減を実施する際には被災地は除外すべきだ。仮に被災した青森、岩手、宮城、福島、茨城5県を除くとすると、約9%の1・6兆円を差し引き、削減対象金額は16・4兆円となる。警察や消防職員の削減率を小さくするなど工夫は必要だが、国家公務員と同じ平均8%を削減するのであれば、年間でざっと1・3兆円を捻出できる。

一般会計から直接支払われる国家公務員の給与と違って、地方公務員の給与を実際に削減する仕組みはどうなるのか。地方財政に詳しい白鴎大学の浅羽隆史教授は、「給与削減額に見合う分の交付税を減らす方法が現実的」と言う。国が被災地を除く地方自治体に給与削減をお願いし、同額の地方交付税を減額、それを被災地復興のための国庫支出金(補助金)に回すのである。

その場合、国から地方交付税の交付を受けていない不交付団体をどうするか。普通交付税の不交付団体は、全国に74市町村および東京都の計75ある(10年度)。ただ、これらの地方自治体は、国から交付税をもらわずに財政をやり繰りしているのだから、給与削減の対象から外れることになる。

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