今後3~5年間の世界経済を予想する--モハメド・エラリアン ピムコCEO兼共同CIO(最高投資責任者)

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国の信用度の乖離は続く。先進国ではさらに悪化し、新興国では引き続き改善する。世界経済は低迷が続き、一極世界から多極世界へと徐々に移行が進むだろう。

こうした基本シナリオには上振れと下振れの可能性がある。

上振れの可能性は、米国が“スプートニクモメント”(ソ連の人工衛星打ち上げが米国を団結させたこと)を再び経験することだ。国家の統合や共通の目的、犠牲の共有という意識が高まり、中期的な財政再建や雇用創出の促進、競争力の強化といった構造改革が進むことだ。他地域では、欧州が債務の持続性を高め、高成長を可能にするために、ユーロ圏の再構築を行う。そして新興国は、消費者を解放し、世界の需要を増やすことに成功する。

ここ数カ月、上振れのシナリオが実現する可能性は高まっている。ただ現段階では、世界経済の下振れリスクを埋め合わせる程度にとどまっている。世界経済の中で付け回しが行われているだけで、それはいつまでも続かない。過剰な所得格差は社会組織を脆弱化させ、先進国の長期的な失業は生産性と労働者のスキルを損なっている。

確実なことは、世界経済は今後数年、異常なほど流動的な状況が続くということだ。また相互に結び付いた世界はしだいに寸断され、世界的なガバナンスと政策協調が弱くなるだろう。変化の恩恵を得ようとする国が逆に変化の犠牲にならないようにするためにも、世界経済は注意深く運営されなければならない。

Mohamed El−Erian
1958年生まれ。オックスフォード大学で経済学博士号取得。国際通貨基金(IMF)、ソロモン・スミス・バーニー、ハーバード・マネジメント・カンパニー社長などを経て、現職。2011年3月末時点でのピムコの運用資金は1・28兆ドルに上る。

(週刊東洋経済2011年6月11日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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