今後3~5年間の世界経済を予想する--モハメド・エラリアン ピムコCEO兼共同CIO(最高投資責任者)

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今後を見通すと、世界経済の回復が加速する兆しが見える。これは異常な政策から秩序ある撤退を図るには好ましい状況だ。また、新興国、特に中国には中所得国への移行を進めていく兆候も見られる。

その一方で、世界経済の不均一で脆弱な回復を示す予兆もある。現在の予想成長率では先進国の財政赤字を食い止めることはできない。ギリシャのような国では緊縮財政と敗者の社会的な犠牲の間のバランスの取り方がさらに難しくなるだろう。米国のような国では、高インフレと財政緊縮、そして、貯蓄者の実質金利がマイナスになるという“金融抑圧”が必要となるはずだ。

最も重要なことは、資産に過剰依存した世界経済の中で、政府と家計のバランスシートが均衡を逸脱していることだ。そのため今後3~5年の間に、長期的な政策の見直しを迫られる可能性が高い。具体的には、医療保険制度、年金制度、失業給付制度などの福祉政策の維持が困難になるはずだ。国際的には、米国が提供している公共財(世界通貨としてのドルを含む)の信用が失墜していくことになるだろう。

上振れの可能性が高まっている

このシナリオの妥当性は、今後数年、世界経済が不均一に回復していくところにある。先進国経済は低成長(年2%以下)にとどまり、高い失業率が続き、構造的かつ長期的な失業に直面することになる。所得格差は高インフレと“金融抑圧”によってさらに悪化する。財政赤字の懸念も続き、欧州では国の債務返済繰り延べが行われるだろう。

新興国は高成長(年6%程度)を達成し、所得水準は先進国に近づいていく。しかし、同時にインフレ圧力の再燃と資本流入の増加を引き起こし、難しい政策選択を迫られるはずだ。

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