「異色」社長が牽引するタムロンのレンズ革命

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 部材の状況についても、きめ細かくチェック。交換レンズは1機種で600部材を使用し、タムロン全体では万単位の部材を扱う。このすべての流れをつかむために、半導体やレンズ素材の供給元に常駐するケースもあった。「3現主義」をここでも貫いたのである。

物流網混乱の影響はありそうだが、小野は強気の姿勢を崩さない。「業界全体では、震災影響は限定的。確かに日本市場は落ち込むかもしれない。ただ、一眼レフの主要マーケットは海外。東南アジアや中国が牽引役になっている。年間を通じて、市場がマイナスになることはないだろう。タムロンの交換レンズもこの1~3月期に、前年比で150%伸びた。4月も計画どおりの実績だ」。

とはいえ、震災は、タムロンが中国の広東省で全量に近い数を生産するリスクを顕在化させた。「他国に出ていくのは言葉や生産指導の面で障壁がある」と小野は語るが、広東省で自然災害が発生した場合などのリスクは高い。早急に、分散化策を検討する必要があるだろう。

中国は人件費高騰の懸念もあるが、これは生産効率化で吸収する方針。現地での現在の内製化比率はレンズ加工35%、プラスチック加工30%、金属加工50%。徐々にこの比率を向上させていく。高精度が求められる金属加工などは早急に100%近い水準に引き上げ
る算段だ。

小野の次なる目標は、13年度売上高740億円、営業利益73億円。一眼レフ市場は肥沃とはいえ、海外メーカーを含めたライバルとの競争は激しく、既存市場を刈り取るだけではいずれ限界が来る。車載用レンズの開発やミラーレスカメラなど新分野への対応を推進することが求められる。革新家の手腕が、ますます重要になりそうだ。=敬称略=

◆タムロンの業績予想、会社概要はこちら

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(梅咲恵司 =週刊東洋経済2011年6月11日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

おの・もりお
1948年2月生まれ。自動車部品会社を経て74年に入社。78年に弱冠30歳で取締役に就任。2002年から現職。

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