「愛されなかった子」が大人になって抱える問題 子ども時代の影響はどのように現れるのか

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他者や特定の行動に依存するような人たちは、「自分の心の中に拠りどころを持っていない人は、外の世界でも拠りどころを見つけることはできない」ということを気づいていません。

このように、遺伝的要素だけでなく、子ども時代に刷り込まれた事柄も、私たちの性格と自己価値観にとても大きな影響を与えます。

ネガティブな刷り込みが大きな影響を及ぼす

心理学では、その影響を受けた人格部分を「内なる子ども」と呼んでいます。子ども時代の経験のほとんどは、顕在意識ではなく無意識(潜在意識)の中に保存されていて、そこには、子ども時代に感じた不安や心配、苦しみなどのネガティブな刷り込み、さらに、あらゆるポジティブな刷り込みも存在しています。

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ただ、ポジティブな刷り込みよりもネガティブな刷り込みの方が、大人になってから大きな影響を及ぼします。なぜなら、子ども時代に受けた侮辱や傷を二度と味わうことがないように、「内なる子ども」がいろいろな対策をとるようになるからです。

これ以上傷つかないようにしようとする「内なる子ども」のこうした対策は、「怒り」になったり、「拒絶」になったりして、人間関係のトラブルの種になります。

また、「内なる子ども」は、子ども時代に満たされなかった「守ってもらいたい」「認めてもらいたい」といった願望を、大人になってから満たそうとするようになります。

子どものころの不安と渇望は、大人になってからも無意識下で作用しているのです。そして、その影響力は私たちが思っているよりもずっと大きく、無意識が私たちの経験と行動の80%〜90%を操っているということは、科学的にも証明されています。

無意識はまさに絶大な力を持つ心の裁判所のようなもの。だからこそ、子ども時代をどう過ごしたか、どのような経験をしてきたかが、「今の自分」にとって大きな影響力を持つことになるのです。

シュテファニー・シュタール 心理学者、心理療法士

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Stefanie Stahl

約30年間の心理療法士、心理学者としての経験、および家庭裁判所鑑定人としての経験にもとづいて、「人とつながることに対する不安」「自己価値感」「内なる子ども」に関する数多くの書籍を執筆。わかりやすく読者の心に寄り添うように書かれた著書の多くがベストセラーになっている。膨大なカウンセリング経験と長年の研究から生み出された、心を改善する著者独自の手法は具体的かつ実践的であるため、専門家の間でも絶賛されている。ドイツのみならず他国でもセミナーを開催。専門家としてのテレビ、ラジオ出演、雑誌の寄稿も多数。

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