キーエンス、社員が「時間と金」に超こだわる深い訳 「5分遅刻する人」に教えたい生産性激落ちの大問題

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お金も同様です。仮に1億円の売り上げがあったとしても、もともと1000万円分の資本投下で済む予定だったものが、予算が膨らんで1億円の資本が必要になったとしたら、その事業は失敗、マイナスと評価されます。逆に同じ1億円の売り上げでも、予定どおり1000万円の資本で済み、かつそこに割かれる自分や社員の時間が少なければ、資本も人の命の時間も効率的に活用されたと高く評価されます。

大企業になるほど、大きな売り上げを生み出していても、そこに投下する資本と、割かれる社員の時間が大きくなりすぎているケースが多くなります。費用対効果や投資対効果について理解しているつもりでも、自分の5分の遅刻がそれらを下げることにつながっているとは考えていないのです。

つねに投げかけられる「それは何のために?」

私がキーエンスに在籍していたのは2008〜2012年ごろですが、とにかく上司から「それは何のために?」といった問いを投げかけられていました。

例えば、「エクセル(Microsoft Excel)のマクロで仕事を自動化したい」と提案すれば、「何のために?」と聞かれます。「○○の作業工程が削減できる」と答えると、次に聞かれるのは「影響力はどれぐらいあるの?」です。もし、自動化を実現できたとして、恩恵を受けることができるのが5人の部署のメンバーに限られているとすれば、その提案は通りません。「他にやることはないの?」と言われます。

これも時間とお金の意識に基づく考え方です。例えば、5人の部署で1日1時間を削減しても200日間で合計1000時間の削減にしかなりませんが、100人の部署で全員が1時間ずつ削減できれば、合計2万時間の削減になります。

出所:『「キーエンス思考」×ChatGPT時代の付加価値仕事術』

価値が高いのはどちらかを考えたうえで、より多くの社員の生産性を上げるために役立つ仕事が求められました。この場合、5人の部署で1人1時間の作業時間を削減できる仕事は、無駄とは言いませんが、他に優先すべき仕事がある、ということです。

キーエンスでは一般的に考えられているよりはるかに高い次元で「約束を守る」ことが大切にされていることがわかったと思います。

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