AI時代に仕事で価値を増す「人間らしさ」の正体 外資系コンサルが教える今後の重要スキル

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一方、生成AI登場以前は人間に適した作業と分類されてきた創造的な作業、あるいは対人コミュニケーションを伴う作業は、生成AIにより侵食されつつある。

生成AIは人間がこれまで作り上げてきた大量のデータ(文章だけでなく絵画なども含む)を学習し、“高度な”模倣能力を身に付けており、過去のパターンの延長線上にある創作物、あるいは既存の創作物の組み合わせでできる創作物であれば、生成AIはすでに数多く生み出し、その実力を証明してきた。人間の創作も、もとをただせばほとんどが過去の創作物の影響を受けたうえで創作されたものであり、すでに定型的なビジネス文章やプログラミングは生成AIで代替可能になりつつある。芸術性を要求される作画、執筆などであっても、“どこかで見たような”作品では、少なくとも創作スピードや創作量に関しては、人間は生成AIに太刀打ちできない世界がすぐそこに迫ってきている。

対人コミュニケーションも、生成AIによって置き換えが進んでいる領域だ。もはや人間と区別がつかないレベルの対話がAIによって可能となりつつある今、単なる情報伝達(伝言ゲーム)だけのコミュニケーションは、生成AIに分があるケースも多い。なぜなら、人間は基本的に1対1でないと会話できないが、AIでマシンパワーさえあれば、何人とでも一度に対話が可能だからだ。

「人間らしさ」の価値が増す世界

では、人間の出番がないかといえば、もちろんそんなことはない。

創作活動においては、過去の作品の延長上にはない、独自性がこれまで以上に価値を増す世の中になるだろう。誰かの真似をするのではなく、個々人の個性、その人なりの独自性がより重要性を増し、付加価値を高めていく。

対人コミュニケーションでも、単なる情報伝達ではなく、人としての意思と情熱、共感が伴えば、まったく意味は違ってくる。こういった「人間臭さ」こそ、来るべき世の中における「人間の価値」として今まで以上に価値を増してくるだろう。

今挙げたような、人としての意思や情熱、共感は、リーダーシップにおいても重要な要素であり、単なる“管理者”としての上司ではなく、「人を動かす」リーダーが一層求められる。

また、肉体を持たないAIは、人間の持つ“アナログな”五感を通じた体験は不可能である。こういった五感を通じて自らが感じること、経験したことをわれわれは一層大事にすべきだろう。

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