迷走の末に「解体」へ、ユニゾHDに待ち受ける試練 国内外で分離もアメリカ事業の売却は難航必至

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残るアメリカ事業にもスポンサー候補のメドは立っているものの、売却完了までには難航が予想される。第一の理由は、前述した不動産価格の下落だ。不動産投資ファンドの幹部は「ユニゾHDのオフィスビルが立地するワシントンD.C.は、とりわけ利上げの影響を強く受けている」と指摘する。

実際、弁護団が地元不動産会社に売却価格の試算を依頼したところ、現在の市況ではオフィスビル6棟をすべて売却しても、現地の金融機関からの借り入れを完済できないことが判明した。これでは債権者への弁済もおぼつかない。

10月24日の債権者集会で配付された資料には国内と海外事業に分離してスポンサー候補を探す方針が記されている(編集部撮影)

もう一つの懸案は、アメリカ子会社の資金繰りだ。アメリカ子会社とSPCを合わせた現預金は、10月末時点で計1300万ドルほど残っているもよう。保有ビルからの賃料収入も毎月600万ドルほど入るため、本来であれば月々の収支は黒字だ。

ところが、4月に民事再生法の適用申請を受けて、アメリカ子会社はビルの修繕費や内装費、テナント誘致にかかる費用を抑制してきた。ビルの競争力や稼働率を維持するには、これ以上投資を手控えることは難しい。今後は維持費がかさんで月々の収支が赤字に陥る見通しで、来年9月にも手元資金が底をつく可能性がある。

実質的なタイムリミットは4月

実質的なタイムリミットは、それよりも早く訪れる。アメリカ子会社が借り入れを行うにあたり、「1000万ドル以上の現預金を維持する」ことを財務制限条項に定めているためだ。現預金は来年4月にも1000万ドルを割る見込みで、その瞬間に「期限の利益」を失い、借入金の返済を求められる。

アメリカ事業の処理に手間取れば、国内事業の交渉にも支障を来しかねない。国内とアメリカを分離するにも、現地金融機関の承諾が必要だからだ。早期にスポンサー候補から売買代金を受領し、現預金の水準を保つ必要がある。

国内・アメリカ各事業の売却が無事に完了しても、旧経営陣への損害賠償といった懸案は積み残されている。解体後もなお、ユニゾHDの運命はうつろい続ける。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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