日本政府の格付けAa2を引き下げ方向で見直し《ムーディーズの業界分析》

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-日本の事業会社15社の格付けを引き下げ方向で見直し

コーポレート・ファイナンス・グループ
主任格付アナリスト/VP-SCO 廣瀬 和貞

 日本国債のAa2の格付けと国内銀行の格付けを引き下げ方向で見直すとの決定を受けて、事業会社15社の格付けを引き下げ方向で見直す。

(1) 鉄道会社3社の長期信用格付けを引き下げ方向で見直し
(2) 大阪ガスの長期信用格付けAa2を引き下げ方向で見直し
(3) 電力会社8社・東京ガスの長期信用格付けを引き下げ方向での見直し継続
(4) トヨタ自動車とエヌ・ティ・ティ・ドコモの長期信用格付けを引き下げ方向での見直し継続

東日本旅客鉄道(Aa1)、東海旅客鉄道(Aa2)、関西高速鉄道(Aa2)の鉄道3社と大阪ガス(Aa2)の格付けを引き下げ方向で見直しとする決定は、これらの企業は、国内経済への依存度が極めて高いため、ソブリン格付けへの低下圧力が強くなった場合には、その結果としての国内事業環境の悪化から、自身への影響を遮断する方法がないという、ムーディーズの見解を反映するものである。

電力会社8社・東京ガスについては、3月11日の震災と福島第一原子力発電所の事故のネガティブな影響を反映し、すでに格付けを引き下げ方向で見直しを決定している。

トヨタ自動車(Aa2)については、11年4月6日より格付けを引き下げ方向で見直し、NTTドコモ(Aa1)についても、5月13日より格付けの引き下げ方向で見直している。


-主要な事業会社5社のAa3の格付けを引き下げ方向で見直し

コーポレート・ファイナンス・グループ
主任格付アナリスト/VP-SCO 廣瀬 和貞

日本政府と主要な銀行の格付けが引き下げ方向で見直しとなったことを受け、次の5社の格付けを引き下げ方向で見直しとする。

味の素 Aa3
アステラス製薬 Aa3
富士フイルムホールデイングス Aa3
セブン&アイ・ホールディングス Aa3
信越化学工業 Aa3

これらの5社を含む日本の主要な事業会社については、ムーディーズは、必要な場合に、日本政府や取引銀行から通常以上のサポートが受けられるであろう可能性を加味しており、単独での信用力評価に加えて1ノッチから2ノッチをサポートシステム要因として織り込んでいる。

ムーディーズは、日本政府や銀行が、これらの5社を含めた日本の大手企業に対して、引き続き支援的な姿勢を継続すると考えている。しかしながら、これらの格付けを見直すのは、事業会社と金融機関が非常に密接なつながりを持つ日本において、これらの会社の格付けが、政府や銀行の格付けによってどの程度制約を受けるのかということを再検討するためである。

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