日本政府の格付けAa2を引き下げ方向で見直し《ムーディーズの業界分析》

拡大
縮小


-日本の銀行およびキープウェル契約の信用補完を受ける子会社に対する格付けアクション

主任格付けアナリスト/SVP-RCC
鈴木陸生

(1) 日本のすべての格付け対象銀行およびキープウェル契約の信用補完を受ける子会社の長期預金格付け、ならびに長期債務格付けを引き下げ方向で見直しの対象とする。
(2) 一部の日本の銀行およびキープウェル契約の信用補完を受ける子会社の短期預金格付け、ならびに短期債務格付けを引き下げ方向で見直しの対象とする。

今回の引き下げ方向での見直しは、何らかの形でシステミックサポートを受ける可能性を織り込んでノッチアップされている、すべての邦銀の格付けに影響を与える。この点に関し、システミックサポートの可能性を織り込んでノッチアップされている預金ならびに債務格付けは、次のいずれかの要因からマイナスの影響を受ける可能性がある。

(1)日本政府の信用力の低下、(2)日本政府が邦銀に対し、必要な場合にサポートを提供する可能性が低下するおそれがあること。ただし、政府の、その能力の範囲内でサポート提供を継続するという動機は引き続き強固なものである、とムーディーズは見ている。

見直しにおいて、ムーディーズは、格下げの可能性がある政府が、必要な場合に銀行システムをどの程度サポートすることができるか、また、それが現在の格付けにどの程度織り込まれているかを評価する。

将来、銀行システムがストレスにさらされた場合、政府は自身のバランスシートを保護するか、あるいは銀行に高い水準のサポートを提供するかの難しい選択を迫られるリスクが高まりつつある。この点に関し、ムーディーズは、東京電力(長期債務格付Baa2、引き下げ方向で見直し中)をめぐる最近の動向を注視している。これは、増大する財政と政治課題への対応と、サポートを必要とする大規模かつシステム上重要な機構からの要請への対応とを両立させようとする、政府が直面している圧力の高まりを表すものと見られる。

見直しにおいては、日本の銀行システムの見通しが引き続きネガティブであり、限定的ながら高まりつつある政府の財政全般に対する圧力が、やがて広範囲にマクロ経済全般に波及し、ひいてはそれが銀行の資産および固有の財務評価に影響を与えるリスクも考慮に入れる。

今回の格付けアクションの影響を受ける格付けには、3大メガバンク(三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ)、信金中央金庫、農林中央金庫、地銀他が含まれる。発行体によっては、発行登録枠/MTNプログラム等に対する予備格付けが付与されているケースも含む)。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT