【産業天気図・海運業】燃油高など不透明感残る。が、荷動き・市況とも堅調

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海運業は依然、燃油高が尾を引いてはいるものの、2005年度下期に入っても荷動きは堅調が続いており、海運市況もピークを付けた04年秋には及ばないとはいえ、上期に比べれば上向く傾向を見せている。前年度がそもそも高水準だったため、今期の利益水準は足踏みないし減益となる企業も少なくはないが、総じて「晴れ」の状況が続いている。
 11月に発表された中間決算時には、海運大手3社では商船三井<9104.東証>が営業増益幅拡大となる再増額修正を行った一方、日本郵船<9101.東証>は期初の営業減益予想を据え置き、川崎汽船<9107.東証>は営業減益幅拡大となる減額修正を行った。
 商船三井については12月12日発売の『週刊東洋経済』(12月17日号)の「ビジネスリポート」でも分析しているように、同業他社に先駆けて船価がボトムだった数年前に発注した新造船が順次竣工することで、資源・エネルギー船部門を中心に高収益を上げている。これに対して、郵船では燃油高騰に弱いコンテナ船の収益率低下が重荷となって小幅減益、大手3社の中で最もコンテナ船比率の高い川崎汽船は減益幅拡大に追い込まれた。とはいえ、商船三井のみならず、他大手2社も好決算だった前期に減損を前倒し処理しているために、最終利益ベースではいずれも過去最高益を計上する見込みだ。
 続く07年3月期についても燃油高の影響が懸念されるが、商船三井は低価格発注の新造船効果で引き続き快走。郵船は海運の改善に加えて非海運の物流の黒字が拡大、今下期に連結子会社化した日本貨物航空も黒字化が見込まれ、小幅増益。川崎汽船もコンテナ船を中心としたコスト改善効果が一定程度期待できそうだ。燃油高の不透明感を考慮すれば、来期も何とか「晴れ」継続といったところか。もちろん、海上輸送ニーズを牽引している米国・中国の景気次第で上下に振れる可能性はありうる。
【大滝俊一記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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