クマに襲われ反撃…生き残った男性の"一部始終" 被害人数が最多となる中、知っておきたいこと

拡大
縮小

「3歳くらいのメスで大きさは体長1m未満、50~60キロ程度と小さめのツキノワグマ。大切なわが子を守ろうという強い母性愛を感じる必死の攻撃でした。私を襲った母グマはしつこかったものの、ちょっと噛みついてすぐに去っていきました」

自身の攻撃をかわしながら熊に反撃している(YouTubeチャンネルより)

まさしく“命懸け”のキノコ狩り。動画を見ると、わずか20~30秒の短い間だが、始終攻撃をかわしながらも自身も攻撃を続けている。生きた心地がしなかったことだろう。

攻防の末、母熊は去っていったものの、噛まれて大怪我をしてしまった『原生林の熊』さん。傷は深かったものの、治療もあってか数日で仕事に復帰できたそう。

無我夢中だったので噛まれた瞬間は痛みを感じませんでした。破傷風になるといけないので、病院に行き治療。骨は無傷でしたが、太ももと腕を負傷しました(牙痕3・爪痕1・擦り傷3)。

牙は斜めに2~3センチほど、深く入っていましたね。2日ほど患部洗浄・化膿止め・破傷風予防・点滴の処置をしてもらい、3日目には仕事に戻り山に入っていました。出血も3~4日は包帯に滲むほど出ていましたが、一週間もたったころにはすっかり血も止まっていましたよ

しかし突然熊が突進してきても、普通の人間なら腰が引けて最善の方法を冷静に判断できないかもしれない。勝因は何だったのか?

「私は山での仕事が長いので、クマに襲撃されそうになったら絶対“先制攻撃”をすると決めて、いつクマに出会ってもいいように常にシミュレーションしていました。周りにも『お前はいつかクマに襲われる』なんて言われてましたしね。だから、クマがいると気づいた瞬間、すぐに対応できたんだと思います。クマに背中を向けなかったこと、倒れなかったこと、諦めなかったこと、気迫だけは負けないという強い気持ちがあったから大事には至らなかったのかも」

また、性格が比較的穏やかな熊だったことで、少し噛みつかれただけで済んだことも幸いしたと分析しているようだ。

「クマは非常に頭がいい生き物。個体ごとに性格も異なり、なかには噛みついたまま頭を振ったり、覆い被さって目を狙ったりするクマもいるんですよ。実際に被害にあって大怪我をしたという話は聞いたことがあります」

長年山に携わる人間の“熊よけ対策”

熊はしつこかったものの、ちょっと噛みついてすぐに去ったという(YouTubeチャンネルより)

襲ってきた熊のその後について聞くと、

「捕まえられてないですよ。頭がいいので、そう簡単には捕まらないし追跡自体がむずかしい。連続で人が襲われた場合は非常に危険なので、罠(ドラム缶や鉄わな)を仕掛けたりして猟友会が仕留めることはあります」

実は『原生林の熊』さんは25年ほど山で活動をしているにもかかわらず、熊とのニアミスは今回含めてわずか3回。長年山の仕事に携わる人間ならではの“熊よけ対策”もあるという。

「大きな音が良いと言われていますが、50メートル先まで遠くまで響くような強力な音を発するものでないとあまり意味ないんですよね。だから私は、むしろクマの気配を聞き逃さないように、ラジオなどは使わないようにしています。あとは、急に後ろから突撃をやられないように吠える犬を連れて歩くことは大事です」

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT