「陰で頑張る社員」に報いる会社が少ない理由 注目されない真の「スター社員」を評価すべき

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企業の中でも「付加価値のある仕事」というのは、ほとんど、全体の3〜5パーセントの社員によるものだと言われる。アイオワ大学のニン・リーらの研究によれば、自分に与えられた以上の働きをし、周囲の同僚たちを助ける「スター社員」は、他の社員すべてを合わせたよりも、会社の業績に大きな影響を与えるという

真のトップパフォーマーが燃え尽きてしまうことも

ただ問題は、こういうスター社員の貢献を正しく認識していない企業が多いということだ。ある調査によれば、他の社員に対して非常に協力的な人たちのうち、社内で「トップパフォーマー」だと認識されているのはわずか50パーセントだという。

そして、社内で「スター」とされている社員の中には、他人にあまり協力的でない人が20パーセントもいるという。自分の数字を上げ、手柄を立てることにばかり熱心で、同僚の成功に貢献しようとはしない人たちだ。

真のトップパフォーマーには、どこかで燃え尽きてしまう危険性がある。皆がその人に対してあまりにも過剰な要求をしてしまうからだ。20社の企業に関して調査したデータによれば、他人と進んで協力する姿勢のある人ほど、最終的には企業に対する帰属意識が下がり、自分のキャリアに対する満足度も低くなる傾向にあるという。

そして、非常に貴重な人材であるのにもかかわらず、結局は勤務していた企業を去ってしまうことが多い。その人が辞めてしまうと、持っていた知識も、人脈も、すべて失われてしまうことになる。また仮に辞めずに会社に残ったとしても、次第に無気力になり、不満を募らせ、それを同僚たちにも広めてしまう恐れがある。

そうした真のスター社員に対し、ほんの少しでも感謝の気持ちを伝えることができれば、状況は変わる可能性がある。それだけで不満は和らぎ、会社に留まろうとするかもしれない。

第一、他の誰よりも同僚を助けている人の働きを無視するというのは、絶対に無礼なことである。積極的に同僚を助けている彼らには、感謝されるだけの価値があるし、会社のトップパフォーマーとみなされる資格もあるのだから当然だ。

はたして自分の会社は、他人に協力する態度を評価できる体制になっているか、確認してみよう。他人を助けられる人こそ最高とみなし、その努力に感謝できる会社になっているだろうか。

クリスティーン・ポラス ジョージタウン大学マクドノー・スクール・オブ・ビジネス准教授

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Christine Porath

活気ある職場を作ることを目的とし、グーグル、ピクサー、国際連合、世界銀行、国際通貨基金、アメリカ労働省・財務省・司法省・国家安全保障局などで講演やコンサルティング活動を行う。
その仕事は、CNN、BBC、『タイム』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『フィナンシャル・タイムズ』『フォーブス』など、世界中の1500を超えるテレビ、ラジオ、紙メディアで取り上げられている。
ノースカロライナ大学チャペルヒル校ケナン=フラグラー・ビジネス・スクールにて博士号取得。博士号を取得する以前は、スポーツ・マネジメントとマーケティングを行う大手企業IMGに勤務。
共著に『The Cost of Bad Behavior』がある。

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