私たち人類はいつアフリカ大陸を離れたのか 世界各地に散った人類の肌の色は多様に

拡大
縮小

人類の「出アフリカ」(21万5000~6万年前)

物語の背景
場所 アフリカ、アジア、ヨーロッパ
前史
約180万~170万年前 ジョージア(旧グルジア)のドマニシにホモ・エレクトゥスがいた。160万年前頃に彼らがインドネシアのジャワ島に到達した(いわゆるジャワ原人)ことも知られている。
約78万年前 イスラエルのゲシャー・ヤノット・ヤーコブ遺跡で、直立原人が火を使っていた形跡が見つかった。
約43万年前 スペインで出土した化石のDNA鑑定で、アフリカから出たヒト族の祖先がネアンデルタール人であることが判明した。
後史
1930年代 イスラエルのカフゼ洞窟などでホモ・サピエンスの化石が見つかり、後に8 万~12万年前のものと判定される。
1949年 アメリカの化学者ウィラード・リビーが炭素の同位体を用いた年代測定法を開発する。今はウランやトリウムを用いた年代測定も行われている。1970年代にギリシア南部のアピディマ洞窟で見つかった頭蓋骨(一部)が、実は21万年以上も前のホモ・サピエンス(現生人類)のものと判明した──権威ある英誌ネイチャーがそう報じたのは2019年のこと。人類がアフリカ大陸を離れて移動したことの痕跡としては最も古い。

移動は何度も繰り返された

考古学的な証拠と遺伝子解析で、すべての人類がアフリカ由来であることは知られている。では、人類はいつアフリカ大陸を離れたのか。かつては7万~5万年前と考えられていた。しかしギリシアとイスラエルの化石から判断すると、初期人類の「出アフリカ」は何度か繰り返されており、少なくとも14万年前には始まっていたと考えられる。ただし、そうした時期の化石はきわめて少ない。そのため現在では、最初期の移動は失敗に終わり、人類はアフリカ以外の地に定着できなかったと推測されている。

本格的な「出アフリカ」が起きたのは12万5000年ほど前で、きっかけは13万5000年ほど前にアフリカ大陸を襲った深刻な干ばつだったと思われる。大陸中部の乾燥化が進み、暮らせなくなった人々はまず沿岸部に移動し、ついでユーラシア大陸に渡ったのだろう。約7万5000年前にはトバ湖(インドネシア)で巨大噴火が起き、噴煙で地球上の気温が下がった可能性がある。それで人類は、限られた資源をシェアするために今までより大きな集団で暮らすことになった。これが集団での移動を促したのかもしれない。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
【資生堂の研究者】ファンデーションの研究開発の現場に密着
【資生堂の研究者】ファンデーションの研究開発の現場に密着
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT