「仕事人」ふなっしーが語る"一流の流儀" Eテレのトーク番組でファンが激増

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ところがふなっしーは、何をやれば人が喜ぶか、をイベント会場のお客さんやネット上の反応を見ながら、研究しつづけたのです。こうして生まれたのが、独特の話芸であり、「梨呼吸」といわれる激しいアクションです。

一流の人しか出演できない『SWITCH』に、ふなっしーが呼ばれたのは、こうしたたゆまぬ努力が評価されたからではないでしょうか。

③手を抜かない
「(ふなっしーにとっての幸せは)死ぬまでにどれだけ楽しい思い出をつくれるかっていうことなっしな。それにもしお金が必要なら、死ぬほど仕事すればいいし、学問が必要なら死ぬほど勉強すればいいと思うなっし」
(『SWITCHインタビュー 達人達』2014年11月15日放送)

胸を打つ「全力投球」

ふなっしーは、どんな仕事でも受けて、キャラクター界の限界に挑戦してきました。通販番組でカニを試食したり、南極の海でペンギンと泳いだり、ドイツでソリ祭りに参加したり、体を張っている姿を見ると、「視聴者が喜んでくれるのであれば何でもやる」という姿勢が伝わってきます。今週放送された「ネプリーグ」でも、クイズ問題で活躍するだけではなく、どの出演者よりも多くコメントし、相づちをうち、番組を盛り上げるのに貢献していました。

ふなっしーと一緒に仕事をした人に聞くと、ふなっしーは自分を見ている人がいるかぎり、つねに全力投球なのだそうです。それがマスコミの人であろうと、イベントに来た子どもたちであろうと、態度は変えません。

先週5月22日に行われた札幌のイベントでも、ふなっしーは取材が終わってからもマスコミの人たちに気を遣っていた、と報道されていましたが、そういうことが普通にできるのだそうです。

確かに、一般の方がふなっしーを撮影した映像を見てみると、舞台上にいないときでも、誰にでも話しかけ、面白いアクションをしているのがわかります。ときには熱さでフラフラになることもあるそうですが、それでも限界まで頑張る。そんなふなっしーの姿を見て、自分はここまで人の役に立つために頑張っているだろうか、とわが身を振り返る視聴者も多いのではないでしょうか。

ふなっしーは、自分の人気の理由を、「日本人独特の『判官びいき』の精神(弱者に同情し、味方になろうとすること)ではないか」と分析していましたが、筆者は、ただただ、無私無欲の精神と一流の仕事ぶりに感嘆するばかり。

『SWITCHインタビュー 達人達』は決して20%を超えるような高視聴率番組ではないけれど、質の高い番組は視聴率にかかわらず多くの人の心を動かすことを実感しました。番組の再放送も待ち遠しいけれど、次は、「プロフェッショナル 仕事の流儀」でふなっしーの特集をしてくれないかと期待しています。

佐藤 智恵 作家・コンサルタント 

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さとう ちえ / Chie Sato

1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組、音楽番組を制作。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著書に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)、最新刊は『コロナ後―ハーバード知日派10人が語る未来―』(新潮新書)。公式ウェブサイト

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