「会見大荒れ」細田氏、議員は続投という"厚顔無恥" 「旧統一教会」「セクハラ」は「問題ない」と強弁

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そもそも岸田首相は、「2年前の政権発足時から、衆院の『10増10減』に公然と異を唱えた細田議長の言動も含め、任期中の辞任を期待していたが、自らが主導すれば立法府への介入になり、最大派閥の反発も招くため我慢してきた」(側近)とされる。

このため、今回の議長辞任についても「秘かに衆院事務局と連携して細田氏に圧力をかけた結果では」(同)との臆測も出る。ただ、細田氏の対応が国民的な批判を巻き起こしたことで、岸田首相周辺は「自民党だけでなく政権へのダメージになった」(同)と危機感もにじませる。

細田氏が議員辞職はしないと明言した理由ついて、政界事情に詳しい専門家はまず、①細田氏の選挙区は島根1区で保守王国なので立候補すれば当選は確実、②総額では4000万円を超える収入が得られる「議員特権」を手放したくない――との2点を指摘する。

併せて、国会議員には、新幹線のグリーン席も含めた無料パスなどもあるほか、東京都港区赤坂などの一等地に格安で入居できる「議員宿舎」、秘書3人までを雇用できる「秘書手当」などもあるため、「当選確実ならやめる気にはならないのは当たり前」と解説する。

こうした議員としての個別事情とは別に、周辺は「細田氏には党内での政治的影響力を持ち続けることへの執念も感じる」と指摘する。政界関係者の間では「これまでは、議長辞職後に所属していた派閥に戻るケースが多く、すでに安倍派の最高顧問就任などが取り沙汰されており、秘かに同派幹部の松野博一官房長官とも接触した」との情報も飛び交う。

「岸田降ろしに加担」は“逆効果”にも

もともと細田氏は「安倍派重鎮として菅義偉前首相とも気脈を通じてきた」(自民長老)とされる。このため、臨時国会召集直前の各メディア最新世論調査のほとんどで内閣支持率が政権発足以来の最低を記録し、しかも不支持率が安倍・菅両政権時の最悪の数字を上回っている現状を踏まえ、「自民党内の岸田降ろしの動きに加担することで存在感を示したい考え」とのうがった見方もある。

その一方で「悪名を振りまいている細田氏が“岸田降ろし”に参画すれば、かえって反岸田グループが国民的批判を浴びる」(菅氏周辺)との分析もある。そうした状況を計算してか「岸田首相は依然として強気で政権運営していく構え」(官邸筋)とされ、今回の細田議長辞任騒動の政治的影響は「当面、自民党内の利害得失が複雑に絡み合う状況」(自民長老)が続きそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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