イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転、望めなくなった中東の安定

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10月13日、首都ワシントンの南バージニア州ノーフォーク海軍基地より、ドワイト・アイゼンハワー航空母艦がイスラエル沖の東地中海に向け出航。イタリア海軍との軍事訓練を終えたばかりのジェラルド・フォード航空母艦とともにイスラエル沖に配備され、アメリカは戦火拡大を抑止することを狙っている。

しかし、ヒズボラなどがアメリカの意図を正確に把握するかどうか、あるいは把握していてもロジカルに行動するかは不明だ。ガザ地区にイスラエル軍が侵攻した後、事態がエスカレートすれば、航空母艦のプレゼンスなどによる抑止がどこまで効果を発揮するかは不透明だ。

原油価格の上昇でインフレ再燃も

仮にヒズボラが参戦すれば、バイデン政権はイランに対する原油制裁の取り締まりを厳格化し、イラン産原油の輸入国にも圧力を強めるであろう。またイラン政府によるホルムズ海峡封鎖の懸念の声もある。原油増産などでサウジアラビアの協力を得るのも、イスラエル軍を支援するアメリカはより困難となるであろう。

中東での戦火拡大は原油価格上昇、ガソリン価格上昇をもたらす公算が大きい。

9月、アメリカの消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.7%上昇と、2022年ピーク時の9.1%上昇からは大幅に下落。だが、中東情勢悪化を契機にインフレ懸念が再燃し、バイデン政権の経済政策に対する不満が高まるかもしれない。今後、大方の予想通り紛争が長引けば、2024年11月大統領選でバイデン再選に向かい風が吹くことが予想される。

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