困窮子育て家庭「1カ月の食費1万円未満」のリアル 物価高で肉や魚を買えず、1日2食になる家庭も

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教育格差をなくすためキッズドアでは、困窮家庭の子どもたちに学びの場を提供している。困窮家庭の子どもたちは、栄養不足だけでなく、学力や自己肯定感の低下、孤独・孤立などの問題を複合的に抱えていることが指摘されている。経済的な困窮によるこうした状況が親から子どもへと引き継がれると、負の連鎖から抜け出すことがさらに困難になっていく。

自然の中で一日過ごす体験イベントが実施された(写真提供:認定NPO法人キッズドア)

困窮家庭では学習塾や予備校に行かせられないだけでなく、家が狭く子どもが集中して勉強できる部屋がない。また家にはパソコンがなく、参考書や問題集を買うのも難しく、模試も受けられない。夏休みではエアコンの使用も控えている。だから無料の学習支援や居場所の提供は、子どもたちにとって切実な問題なのだ。

物価高騰で親たちが悲痛な叫び

「子どもがまんなかと言いながら、政府の対応は後手後手に回っている」と渡辺さんは憤慨する。

「今、少子化で人手不足感もある中で、働ける優秀な人材を育てるのが日本の将来のために一番重要です。その人材が誰なのかと言ったら、間違いなく子どもです。子どもが貧困だから無料の学習支援をしようだとか、ご飯が食べられないから子ども食堂を作ろうとか、症状が出てから対処する。根本的には困窮する家庭があるのが問題なので、そこに早めの手を打つべきです。そうすればこんなに酷いことにはならないと思います」

キッズドアには、こんな困窮家庭からのメッセージが届いている。

「物価高騰でお腹が空いても水を飲んでごまかす。学校の健康診断でも子どもは痩せすぎで注意を受けましたが、どうしようもない状態です」

「私は食費を抑えるためになるべく食べないようにしています。下の子は『大人はご飯を食べなくても大丈夫』だと思っている。栄養不足で会社の定期健診の結果が悪くなりましたがお金がなくて通院できない」

日本は本当に世界第3位の経済大国なのか。子どもの貧困問題を日本社会全体で取り組むべきときがきている。

鈴木 款 教育アナリスト

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すずき まこと / Makoto Suzuki

1985年早稲田大学政治経済学部・2020年同大学院スポーツ科学研究科卒。農林中央金庫で外国為替ディーラー等担当。NY支店に4年半勤務。1992年フジテレビに入社。営業局、「報道2001」ディレクター、NY 支局長、経済部長を経て現在解説委員。著書に『小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉 』『日本のパラリンピックを創った男 中村裕』『日経電子版の読みかた』、編書「2020教育改革のキモ」。教育問題をライフワークに取材。テレビ・ラジオ出演、講演・大学講義や雑誌・ウエブへの寄稿多数。映倫の年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。趣味はマラソン、トライアスロン。2017年にサハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。

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