トヨタが「6月9割稼働」方針、対応に追われる部品メーカー

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トヨタが「6月9割稼働」方針、対応に追われる部品メーカー

トヨタ自動車が東日本大震災の影響で落ち込んでいる国内生産を急回復させる方針を示したことで、系列部品メーカーが対応に追われている。部品の調達難により、同社の国内生産は足もとで震災前の5割程度、1日あたり6000台から7000台レベルで推移している。

 5月11日の決算発表時、トヨタは6月の生産水準は震災前の7割程度まで戻せるとの見通しを示していた。ところが、今週に入って同社が取引先に対して内示した6月(6月6日からの1カ月)の生産計画は、震災前の94%という高い水準だった。7月も同じレベルで、8月には震災前と同様の、1日あたり1万3500台程度の生産に戻る。

予想以上の短期間で生産が急回復するため、トヨタ系部品メーカーはいま原材料確保のため奔走している。電力供給の不安が和らぐ10月以降には、上期の遅れを挽回するために、さらに高い水準の生産が予想されている。「一時的には、リーマンショック前の1日当たり1万8000台水準までいくのでは」(系列部品メーカー幹部)という声も出てきた。

生産の回復度合いは、車種によって相当ばらつきが出そうだ。震災後に自動車生産の足かせとなってきたのは電子制御用の半導体、いわゆるマイコンだが、その供給にはまだ制約が大きい。特注品のマイコンを大量に使った高級車の生産が通常に戻るのは、これまでの見通しどおり、11月以降になりそうだ。また、クルマの電子制御化が進んだ現在では、マイコンの調達は部品メーカーにとっても大きな課題。トヨタが示したペースについていくのは簡単ではない。

リーマンショック後にトヨタ系の部品メーカーは、「ピーク時の7割程度でも利益が出る体制」を合い言葉に、固定費削減を徹底的に進めてきた。この夏以降の挽回生産局面では、まったく想定外のかたちで大幅な増産をこなすことになる。

固定費増を最小限に抑えながら、急激な数量の変動に対応できるか。トヨタ生産方式の真価が試されることになる。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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