今こそEUとの経済連携協定(EPA)を推進すべき--東日本大震災からの経済復興に向けて

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 なお、輸入物価の下落がデフレを悪化させるとの懸念も伝えられるが、震災後の供給不足によって、むしろ品不足によるインフレが懸念されるところであり、さらに言えば、数%の関税撤廃による価格低下よりも、為替レートの変動の方がずっと影響があるため、EPAに反対する議論としては意味がない。

米国やオーストラリアなど、国際競争力を有する農業国と異なり、EUの農業は規模や農家の保護の面で、日本に近い。経済連携という大きな議論の中で、お互いが、守るべきところは守り通すことが可能だろう。

閉塞感を打破する前向きな思考を

今は被災者の支援が急務であり、外交政策のビジョンを語ることはむずかしい。しかし、今日の生活は明日の、そして来年の、さらに将来のビジョンを持ってこそ成り立つのも事実だ。震災前ですら、閉塞感に包まれたこの社会で、日本人は明日へのビジョンを持てずにいた。日本が抱える構造的な課題を解決し、前向きな思考で行動するのは今しかない。

5月26、27日、菅直人首相は、フランス・ドーヴィルで開催されるサミットに出席し、EU各国の首脳とも会合を持つ予定だ。日本政府として、EUとのEPA交渉を開始し、震災からの復興に力を与えることを期待する。

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