"米国一住みたい街"に日本人も注目する理由 それはNYでもシリコンバレーでもない

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地元の食材でヘルシーな料理をつくったり、温暖な気候の下で大自然やスポーツを楽しんだり、アートな生活を送ったり、ボランティアや仕事を通してコミュニティーとかかわったりすることが、ポートランダーの最優先事項だ。

「オレゴン中央部の砂漠から森林、カスケード山脈の山々、全米一の海岸線などの絶景も、ポートランドやオレゴンにぞっこんになった理由の一つだ」(バースさん)。

個人利益を求める価値観とは違う

市内を走る480キロメートルの自転車専用レーン、自転車を買うお金がない住民を対象にした地元信用組合の自転車ローン、製品をリサイクルし、より価値の高いモノを作る「アップサイクリング」、ラーメンからスシ、メキシカン、タイ料理まで、シェフを夢見る若者が料理のイノベーションを競い合うフードカート(屋台)文化――。

スコットさんが挙げるポートランドらしさは、どれも耳に優しく響く。

シャーウッドさんいわく、今の若者の多くは多額の学生ローンを抱え、不況で苦労した分、お金や安定、就職、個人的利益を人生の大切なゴールだと考えがちだ。「ポートランドに移り住むことは、そうした価値観に背を向ける一つの道かもしれない」(同氏)。

「オッケー、もうガーデンに戻らなきゃ」。5月のある金曜日の夕方、起業家ウォールドマンさんから送られてきたメールの最後には、こうあった。

エコで、ヘルシーで、飾らず、自分らしさを追求できる都市、ポートランド。米国のみならず、日本でも注目が集まる理由は、成功至上主義が台頭する中、それとは違う生き方や価値を求めている人が増えているからかもしれない。

肥田 美佐子 ニューヨーク在住ジャーナリスト

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ひだ みさこ / Misako Hida

東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身ニューヨークに移住。アメリカのメディア系企業などに勤務後、独立。アメリカの経済問題や大統領選を取材。ジョセフ・E・スティグリッツなどのノーベル賞受賞経済学者、「破壊的イノベーション」のクレイトン・M・クリステンセン、ベストセラー作家・ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルやマイケル・ルイス、ビリオネア起業家のトーマス・M・シーベル、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長(英国)など、欧米識者への取材多数。(連絡先:info@misakohida.com)

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