SAPIX共同代表「プログラミングは二の次でいい」 グローバル化やAIの時代も教育の本質は変わらない

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そうしたテーマを追いかけているうちに、新型コロナウイルスのパンデミックが起きるなど、世の中が目まぐるしく変わりました。昨年ぐらいからは、SDGsについても、社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子先生と新聞で対談を行うなど注目しています。

いろいろなテーマで議論してきて思うのは、「教育の本質は変わらない」ということです。グローバル化の時代だ、AIの時代だと言って、「こういう時代が来るから、こう備えよ」と考えるよりも、「今ある良い部分をしっかり残していく」ことのほうが大事ではないかと思っています。

国語力を育てるために大切なこと

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例えば、あるイベントで、詩人の谷川俊太郎さんと劇作家・演出家の平田オリザさんとの対談が行われたとき、聴衆から「国語力を育てるために大切なことは何ですか」という質問が出ました。

自由な発想や、想像力というような言葉が出るのかと思ったら、「朝に家を出て、学校に着くまでにあったこと、見たことを話せればいい」とおっしゃるのです。想像力などというものは、その後でいいのだと。

つまり、家族の間で「今日、何があったの?」「それは楽しかった?」という、ごく当たり前の会話をすることが大事だと指摘されていました。

プログラミングだ、クリエイティビティだと騒ぐ前に、まずは「その日学校であったことを話そう」というのは、とても大切なことだと思います。時代のキーワードのようなものに引きずられると、そういう当たり前のことを見落としてしまうのではないでしょうか。

子どもの話を真剣に聞く、一緒に本を読むといったことをもっと重視すべきで、「プログラミングやタブレットなどは二の次でいいのではないか」と思うのです。

髙宮 敏郎 SAPIX YOZEMI GROUP共同代表

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たかみや としろう

1974年、東京都生まれ。1997年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)に入社。2000年、学校法人高宮学園代々木ゼミナールに入職。同年アメリカ・ペンシルベニア大学へ留学し、教育学博士(大学経営学)を取得。帰国後、財務統括責任者を務め、2009年より現職。学校法人高宮学園代々木ゼミナール副理事長、株式会社日本入試センター代表取締役副社長も兼務。「教育はサイエンスであり、アートである」をモットーに、これからの時代を担う子どもたちの教育を支える活動を行っている

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