今の日本における「もっといいクルマ」とは? 安心を売る「福祉車両」で何が起きているか

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「ウェルフェア2015」に出展されたトヨタ自動車の福祉車両。同社は多くの種類をラインナップしているが誤算もあった

介護の必要な人を車いすごと乗せることなどができる「福祉車両」が市場を拡大している。日本自動車工業会が5月8日に発表した2014年度の福祉車両販売実績は4万7869台と、前年度比108.3%で過去最高だった。しかしそのラインナップを見ると、高齢化社会への対応に向け、決して明るいだけとは言えない。

「軽」が市場を牽引

名古屋市で5月21日から3日間の日程で始まった国際福祉健康産業展「ウェルフェア2015」。会場にはベッドやリフトなどの介護用品とともに、大手自動車メーカーの福祉車両がずらりと並ぶ。「車いすでもラクに乗り降り」「室内は広々で安心」といったキャッチフレーズが踊る各社のブースを、車いすを押した来場者が真剣な表情で回っている。

80代の母親を介護している男性は、後部から車いすを乗り入れるスロープの使い心地を熱心に確かめながら、「やっぱりスムーズに出し入れできる方がいいよね。家族の買い物用にも使うから」と話した。

2014年度の福祉車両販売実績の内訳を見ると、普通・小型自動車が約2万5000台と前年度比102.6%という微増なのに対し、軽自動車は1万8560台で120%の伸び。前年割れしたバス車両の減少分を補って余りある売れ行きを見せている。

牽引役と目されるホンダの「N-BOX+」はコンパクトな車体に電動ウインチ式の車いすスロープを装備。スロープを床に収納して荷物の台にしたり、全座席を倒してベッドにできたりするなど「普段使い」の利点も強調する。「軽」で普段からしのぎを削るダイハツやスズキも、それぞれ「タント」や「ワゴンR」などの主力車種をベースにした福祉車両をアピールしていた。

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