安川電機が「隣で働くロボット」を強化する事情 人手不足を背景に「協働ロボット」市場が拡大

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協働ロボットのビジネスには難しさもある。

自動車工場などは従来の産業用ロボットを「年間何十台、何百台と導入するのも珍しくない」(安川電機)。対して、国内で協働ロボットを導入しようとしている中小工場は、生産ラインの完全な自動化というよりは、ピンポイントで“人との置き換え”を求めることが多いため、大規模な導入はそれほど期待できない。

湯田牛公社は冷蔵庫内の1台に続き、箱詰め室内での作業に2台のロボットを導入した(記者撮影)

また、現状は「協働ロボット」というコンセプト自体が比較的新しいもののため、顧客に認知を促すための努力も必要になる。従来の産業用ロボットのイメージから、安全性を心配する声もあるようだ。冒頭の湯田牛乳公社も、「ロボットには“危ない”というイメージがあって、導入までは抵抗感があった」(高橋製造部長)と振り返る。

つまり、従来の産業用ロボットに比べると、商談の規模が小さくなりがちで、顧客獲得にも手間が掛かる。だからといって、協働ロボットに力を入れない選択肢はない。労働力不足が深刻化する以上、多様な産業で協働ロボットの活躍余地は間違いなく広がっていくからだ。

産業用ロボット世界大手が新興勢力を追撃

安川電機もさまざまな手を打つ。2018年8月には食品生産現場向けの協働ロボットなどを展開する子会社のFAMS(新潟県見附市)を設立。湯田牛乳公社のような導入実績を積み上げてきた。

林田歩・上席執行役員は、「そもそも協働ロボットと従来の産業用ロボットを分けた考え方はしていない」と話す。「当社は産業用ロボットの総合メーカーだ。成長市場の協働ロボットは、当然ラインナップを拡充していく。ただ、他事業のサーボドライブやインバーターも含めて、顧客の自動化・省人化ニーズに応えられるのが当社の強みだ」(同)。

新興勢力が先行する協働ロボット市場。老舗のプライドをかけて安川電機が巻き返しに動く。

村松 魁理 東洋経済 記者

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むらまつ かいり / Kairi Muramatsu

自動車業界、工作機械・ロボット業界を担当。大学では金融工学を学ぶ。趣味は読書とランニング。パンクロックとバスケットボールが好き。東京都出身。

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