延命をにらんだ菅首相の「政治判断」

延命をにらんだ菅首相の「政治判断」

塩田潮

 菅首相は先週末から今週末まで「外交ウィーク」である。

 21~22日の中韓両国トップの訪日による首脳外交に続いて、26~27日はフランスのドーヴィル・サミットに出席する。

 サミットの主催国、サルコジ大統領からは、3月末の来日の際、冒頭演説を、と持ちかけられた。それも視野に、巨大地震の確率が高い浜岡原発の全面運転停止要請を5月6日に行った。

 菅首相はサミットでは、各国の支援への謝意、復興への決意、原発事故の事実関係と収束への取り組みなどと合わせて、原発推進のフランスの立場も考え、地震国の特殊事情と安全性向上による原発継続を表明すると見られる。

 国内では、サミット後の菅降ろし再燃説が飛び交っている。だが、浜岡の停止要請に対する世論の支持は高い(朝日新聞は「評価する」が62%、共同通信は66・2%。16日発表の調査)。その波に乗って、「外交ウィーク」でも得点を稼ぎ、政権の浮揚を図るとともに、「政争不可」の国民の声を背景に「6月危機」を乗り切るというのが首相のシナリオだろう。

 浜岡停止要請は正しい決断である。とはいえ、一方で「外交ウィーク」と「6月危機」を強く意識した菅首相の起死回生の一手だったのも間違いない。

 13日、菅首相は参議院予算委員会で「政治判断させてもらった。評価は歴史の中で」と述べた。首相のリーダーシップ、真の政治主導を強調したかったに違いない。

 だが、政治判断という言葉には、法的根拠や既存の制度、前例などの枠を超えた政治リーダーの大きな判断という用法の他に、利害得失、政治的な効果や影響の度合い、思惑や政略などによって非合理的、非論理的、原則無視の判断を下すという意味がある。

 菅首相は「政治判断」と胸を張ったが、「外交ウィーク」と「6月危機」を前に、延命をにらんだ政治的選択だった面がある。私心を棄てて復興・日本再生に全力投球なのか、延命優先なのか、菅首相の政治判断の真意を見抜いて評価を下すのは、遠い先の「歴史」ではなく、6月以降の国民の声である。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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