「リビア大洪水」国民が政府にブチギレている背景 湿原に加え、責任逃れの政治家に国際調査要求

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他の人たちと同様、アル=ハサディも国際社会に対して調査の開始を求めた。彼と家族の何人かは、何時間も洪水から身を守るために、3階建ての建物の屋上にある貯水タンクによじ登らなければならなかったという。彼のおば2人は洪水で命を落とした。

ヨーロッパ外交問題評議会の上級政策研究員、タレク・メゲリシは、今回の洪水に対するリビア国民の反応を、レバノンの政治権力に対する国民の怒りを引き起こした2020年のベイルート港湾爆発事故後の反応になぞらえる。

当局の調査に懐疑的な国民

多くのリビア国民にとって、彼らの「怒りは当初、これは自分たちに対する恐ろしい犯罪だとして、『全員辞職すべきだ』という形で表れた」と彼は言う。

司法長官のアル=ソールは捜査を開始したが、この国の汚職と不処罰の歴史は長く、国民の疑念は深い。司法長官は東西の両政府が合意した数少ない政府職のひとつであり、双方と連携している。

アル=ソールは15日夜のテレビ会見で、「ミスを犯した者、怠慢だった者、至らずにこの災害を引き起こした者は全員、当然ながら断固とした処分を受けることになる」と宣言した。

気象予報士のアル=ハサディは、司法長官はこれまでにも多くの捜査を行なってきたが、法廷に引きずり出された者は誰ひとりとしていない、と話した。

(執筆:Raja Abdulrahim記者、Vivian Nereim記者、Hwaida Saad記者)
(C)2023 The New York Times

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