米SECが「虚偽申請」を見抜けない理由 エイボンへの謎の買収提案で再び注目

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新方式が採用されたのは、高速のアルゴリズム取引が出現するずっと前のことだ。トレーダーはえてして、SECへの届け出に関するニュースに反応するのにできるだけ有利な立場に身を置きたいと考える。ニュースはロイターやブルームバーグのような通信社がちょっと報道しただけですぐに広がる。

だからこそメリーマンたちは、SECに虚偽の届け出を減らすための対応を求めているのだ。

「対応を強化すればマイナスの影響が避けられない」

SECの関係者たちは、申請プロセスの敷居を低くしようと思えばマイナスの影響があるのは避けられないとみていると、この問題について知る当局者は匿名を条件に語った。この人物によれば、虚偽の申請が含まれるケースはほんの数件に留まっているらしいという。

ロッキーマウンテンに対する虚偽の買収提案について、知る限りではSECは調査を行っていないとメリーマンは主張する。証券業界の代表的な自主規制機関である金融取引業規制機構(FINRA)からの書簡に同社が回答したにもかかわらずだ。

ちなみにロッキーマウンテンに対する虚偽のTOB提案を行ったのは「PSTキャピタル・パートナーズ」と名乗る企業だった。エイボンのケースでは「PTGキャピタル・パートナーズ」という会社だった。

SECのデータベースによると、PTGもPSTも英領インド洋地域で登記されている。英領インド洋地域は2000を超える小さな島々からなる群島で、データベースにあるPSTの電話番号はすでに使われておらず、PTGの番号もメッセージは受け取れなくなっている。

法律事務所バックリーサンドラーのトーマス・スポーキン弁護士は、SECで20年近く規制する側に立っていた。スポーキンによれば、エドガーへの申請をチェックしようにもSECの態勢は十分ではない。

システムの悪用防止のために「やれることは限られている」と彼は言う。14日の声明でSECは、エドガーには1日に約4000件の届け出があり、申請を認められたユーザー数は30万を超えるとしている。

それでもメリーマンに言わせれば、何らかの対応が必要だ。「われわれはひどい時間とカネの無駄使いをさせられた」と彼は言った。

(執筆:Matthew Goldstein記者、翻訳:村井裕美)

© 2015 New York Times News Service

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