泉谷直木・アサヒビール社長--食品で世界10位が目標、アジアでは「生」で攻める

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──中国市場は競合他社より先行している印象を受けます。

飲料と食品では、台湾の頂新(ちょうしん)グループと組んでいる。現在は量的な競争に勝ち抜くことが重要な中国市場も、最後は品質の競争になると彼らは分析している。そのときにどうしても品質でのパートナーが必要になるため、われわれとパートナーシップを組んでいきたいということだ。

われわれは頂新が中国市場でも最大の食品メーカーであり、流通や外食もやっていることにいろいろな可能性を感じる。当社が単独で出て行き調査を行ったり、中国の実態に合わせて、自分たちで戦略を組み立てるのは難しいからだ。

現在、中国戦略のため、頂新とは九つほどのプロジェクトチームを作っている。たとえば、フリーズドライ食品の技術については、一人っ子政策で子どもにお金をかける国であることから、粉ミルクやベビーフードへの活用を考えている。プロジェクトは今年中にはスタートさせる。

青島(チンタオ)ビールにも去年から出資している。中国には独自の現地法人もあるが、その会社がなかなか黒字化しない中で青島と提携した。今期は黒字化する見通しだ。青島は中国内で華潤(かじゅん)などと強烈な競争をしており、青島の経営者もいずれ必ず品質の競争になると言う。当社には中国にはまだない「生」のビールを造れる設備や品質管理のノウハウがあり、中国展開での強みと認識している。

--海外進出の障壁も出てきました。豪州では飲料2位メーカーを買収済みですが、3位メーカー買収を決めたことに対し、豪州競争消費委員会から反対声明が出ました。

豪州は基本的にはオープンな国。ただ、今回の買収は当社が同国の清涼飲料市場でシェア第2位、約30%となるため反対が出た。同国の独占禁止法なども絡み、交渉は多少長引くだろう。現在、当局と交渉中で、あきらめるつもりはまったくない。

今後も国によっていろいろな問題が出ようが、現地のパートナーと一つひとつ解決するしかない。そのためにもグループとして一段とグローバル化するという意識が必要だ。

東京に本社があっても、グローバルの中心でも何でもない。本社を通さないと何事も決まらないようでは、世界のお客様に満足してもらえない。世界品質と評価され、買い続けていただけるような商品を造る会社として生き残っていきたい。

いずみや・なおき
1948年京都府生まれ。京都産業大学法学部卒業後、72年アサヒビール入社。86年に広報企画課長。その後、10年間広報畑を歩む。2010年3月から現職。11年7月のアサヒグループホールディングス社長就任が内定。


◆アサヒビールの業績予想、会社概要はこちら

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(聞き手:大滝俊一・週刊東洋経済編集長、張 子渓 撮影:大塚一仁 =週刊東洋経済2011年5月21日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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