社長公募が問いかけたワンマン経営の落とし穴

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 ただ上場する自動車、自動車部品メーカー83社の社長の経歴を見ると、44社が自社出身、32社が親会社や関連業種出身で、9割近くが製造業出身で占められる。あとの1割弱を占めるのが商社や銀行の出身者で、官僚出身の社長は皆無だ(下図)。

社長のヘッドハンティングを専門に手掛ける半蔵門パートナーズの大松尊社長は「マイケル・ジョーダンが、バスケットボールから野球に転じて結果を残せただろうか。種目が変われば使う筋肉も違う。官僚と経営者にも同じことがいえる」と分析する。

また田邊社長と面識のある人材コンサルタントは「なぜキャリア官僚なのか、という理由がない。日産の元常務の次は外務官僚、要は肩書に弱いだけ」と推測する。

田邊氏は「私が海外展開を進めてきたから今のユーシンがある」と自らの成果を強調する。一方で、解任された竹辺氏は「ユーシンの強みは、工場長や部長クラスがしっかりしていることだ」と指摘。八重樫氏に対して「焦らず、時間をかけて現場のことを勉強すればいい」と助言するが、その時間はあるか。

ワンマン体制を築いてきた田邊社長は前回の失敗を生かし、真にトップの座を明け渡すことができるのか。官僚出身の八重樫氏は、経営者として力を発揮し、田邊氏と良好な関係を築けるのか。今まさに、2度目の賽(さい)が投げられようとしている。

◆ユーシンの業績予想、会社概要はこちら

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(松浦 大 撮影:田所千代美 =週刊東洋経済2011年5月21日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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