死者増える「モロッコ地震」支援が遅れた最大理由 国王中心の「超中央集権的」体制のアキレス腱

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それでも、村の組合長であるジャマール・エラブルキ(54)は楽観的な見方を試みた。「今週は雨の予報です」と彼は話した。「雨が降らなければ、私たちは恐れます。本当にひどいことになりますよ」。

数十カ国が援助を申し出た。スペインは捜索救助隊を派遣すると発表し、カタールの国営メディアはカタールが専門車両と機材を派遣すると報じた。しかし10日、一部の政府や援助団体は、地方の病院が圧倒されているにもかかわらず、まだモロッコの許可を待っていると述べた。

アズグール村にある家屋(写真:Sergey Ponomarev/The New York Times)

政府の「中央集権的」体制が支援の妨げに

2月にトルコとシリアで発生した地震で救援活動を行った「国境なき医師団」の創設者であるアルノー・フレイズは、フランス国営ラジオ「フランス・インター」のインタビューで、モロッコは同団体に支援の許可を与えていないと述べた。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、政府はモロッコ当局と連絡を取り合っており、支援する用意があると述べた。インドで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議の傍らで、マクロン大統領は「要請があればすぐに出動する」と述べた。

スタンフォード大学で北アフリカを研究するモロッコ系アメリカ人の歴史家、サミア・エラズーキはインタビューで、政府の「重く管理された中央集権的」機能が災害対応を妨げていると述べた。

「どのような自然災害でも、発生直後の数時間が最も重要です」と彼女は話すが、国王が公式のコメントを発表するのに時間を要した点に触れた。「本来ならどれだけの命を救うことができたでしょうか」。

国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のキャロライン・ホルト理事は、地震発生後3日間は救助隊にとって「ゴールデンタイム」と呼ばれることがあり、モロッコで被災者の救助に当たる緊急隊員にとって重要な時期であると述べた。

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