大人が知らない!?学校給食のグルメな真実 公立もすごい!日本の現場力、ここに極まる

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大隈:給食は毎日のことで、どうしても現場は日々の作業に追われ、往々にして楽なほうに流されがちです。だから、遠藤先生が言われるように、「本社が現場を褒めること」と「オープン・アイズ(現場の目を外へ開くこと)」の仕組みの両方が必要だと感じています。

遠藤 功(えんどう・いさお) 早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長。早稲田大学商学部卒業後、三菱電機、米国系戦略コンサルティング・ファームを経て現職。早稲田大学ビジネススクールでは、経営戦略論、オペレーション戦略論を担当し、現場力の実践的研究を行っている。 また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。

遠藤:ええ、現場が分散していても、ほかの現場の意欲的な取り組みを共有することができれば、競争意欲は自然と生まれます。一般企業の現場にも同じことがいえますよね。閉じこもりがちな現場の目線を外に向けることによって、現場の持つ潜在的なエネルギーに火がつきます。

大隈:当社も、創意あふれる給食を「褒める仕組み」を導入してからは、ある事業部では事例報告件数が年間19件から484件へと一気に増え、目標の360件を大きく上回りました。

遠藤:もともと、創意工夫する現場力のある会社だったのですね。

大隈:おかげさまで、最近は栄養士や調理師たちの間で、遠藤先生の「見える化」や「現場力」という言葉が流行していますよ(笑)。

遠藤:光栄です。本社が現場に目を向け、現場が工夫した「作品」を発表・共有する場ができたことが、現場力に火をつけているのですね。

「-1」ではなく「+99」に着目する

大隈:それまでの責任者会議は、お客様からのクレームや調理現場のミスを集めて、その対応策を練ることが多かったのです。それが「褒める仕組み」を入れてからは、現場の雰囲気も明るく、前向きになったようです。

遠藤:給食事業を含め、サービス業界ではいまなお「100-1=0」、つまり「ひとつのミスで全部がダメになる」という考え方が主流です。「-1」をなくす努力は大事ですが、同時に「+99」に目を向けることも大切ですね。

大隈:私たちも、以前は「-1」をなくそうとばかり考えていました。でも、それだと、給食をつくる現場では、ギスギスした雰囲気に陥りがちです。

遠藤:「いい仕事」をしている「+99」に目を向け、褒めることによって、結果として「-1」がなくなっていくと思っています。

大隈:先生の考え方のほうが、私も共感できます。本社が現場を褒め始めてから、会議も前向きなものになり、出席率も上がったのですよ(笑)。

遠藤:「-1」にこだわると、どうしてもモグラ叩きになり、むしろ「−1」がいつまでもなくならない。それよりも、「+99」を生み出している現場を褒め、競争力を前向きに高めるほうが、はるかに健康的だし、間違いなく現場は活性化します。世界に誇る給食の会社を、さらにレベルアップさせていってください。

(撮影:田所 千代美)

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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