浜岡原発「強行」停止で賛否、岐路に立つ原発政策

拡大
縮小


 問題はいったん止めた浜岡を再運転できるかだ。中部電の水野社長は「海江田万里経産相と話し、防潮堤などの工事が終わり次第、再開できるとの確約を得ている」と強調する。2年後の再運転を目指すとはいえ、口約束なだけに空手形にもなりかねない。

それどころか10日には、菅首相が自ら、エネルギー基本計画の見直しに言及した。30年までに原子力発電の割合を50%以上とする政府のエネルギー基本計画について、「いったん白紙に戻して議論する必要がある」と表明。「再生可能な自然エネルギーと、エネルギーを今ほど使わない省エネ社会の構築に、これまで以上に大きな力を注ぎ、政策全体を見直したい」との考えを示した。

焦点は点検中の他原発

地元も総じて浜岡停止を歓迎する向きが強い。名古屋市の河村たかし市長は「余分な電力、過度な電力は使わないようにすれば問題ない。経済活動を阻害しないように、(愛知県知事の)大村(秀章)さんとも協力しながらやっていく」と淡々としている。

政府は浜岡停止は例外としているが、今後、ほかの原発にも影響が及ぶ可能性はある。全国に54基ある原発のうち、福島第一や浜岡、定期点検中の原発を除くと、運転中の原発はわずか18基。これから点検などを終えて再稼働を予定する原発もあるが、福島第一の事故で政府だけでなく、地元も再運転には慎重だ。海江田経産相は「必要があれば自ら出向く」とするものの、地元の理解を得るのは至難の業だろう。

福島第一の事故発生から2カ月。「脱原発」へ向けた歯車は、早くも回り始めているのかもしれない。

(山田俊浩 =週刊東洋経済2011年5月21日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

photo:E-190 Creative Commons BY-SA
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT