住友商事式“年功序列”制度、競争の促進と、きめ細かな指導育成で工夫凝らす

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 講座を通して、能力の底上げを地道にしていく一方で、数年ごとに他部署や関連会社、海外事業所への配置転換を随時、行っていく。

同社は7つの事業部で成り立っているが、この定期的な配置転換制度を導入する以前は、入社10年以内の社員でも優秀である場合は、その部でいわば囲い込みになることもあった。これは事業部制の大企業で見られる光景だが、渡部氏によるとその問題は克服されつつあるという。

「かつてよりは、ローテーションは増えてきている。入社し10年間で3~4つの異なる業務を経験することで、広い視野を持った管理職になってもらいたい」

将来を見据え、きめ細かな指導育成

「基幹職B級」から「基幹職A級」へ、つまり、管理職に昇格する際にもハードルが設けられている。TOEICで730点以上を獲得することである。

この10年に及ぶ育成期間において、「基幹職C級」「基幹職B級」の社員を査定するプロセスは、本人が「人材アセスメントシート」と呼ばれる人事考課シートに、必要事項を記入することから始まる。

現在の職務内容や今後2~3年の職務内容、異動希望の場合はその部署や理由、さらには中・長期的なキャリアプラン、語学力、資格、健康管理、家族事情などだ。これらを基に本人と考課者である上司が話し合い、今後のキャリア形成をともに考えていく。1次考課者は直属上司、2次考課者は本部長など上席者となる。

今後のキャリアを考えるという観点でシートをとらえると、「今年度のジョブアサインメント(期待役割など)に対する現状認識」という欄が特徴的だ。ここに本人が300字ほどで記入する。さらにその下に、「今後より大きなジョブアサインメントを担うためにクリアすべき課題」とあり、自分の強みや弱み、今後習得すべきスキルや専門性を踏まえて書く。考課者である上司もコメントを書くことになっている。

そのほかにも上司は「本人の能力・資質と現職務との適合性」「配置・育成計画」「現時点での期待度」などにコメントを書き加えていく。

これらの上司や部下とのかかわりからは、人事部がそれぞれの社員の適性を見極めつつ将来を見据え、きめ細かな管理や指導育成をしようとする意図が見えてくる。

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