ジャニーズとビッグモーター、渦中の企業の共通点 同族企業、資本関係…相違点はファンの有無?

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ただ、テレビや新聞などのマスメディアにとっては「そうではなかった」面は否めない。その結果、広告を大量出稿してくれるビッグモーターや、高視聴率のタレントを有するジャニーズ事務所は、ただの取引先にとどまらず、もはや「上得意」の域に達していたのではないか……そんな疑問が大衆の間に広がった。

事実、報告書では「マスメディアの沈黙」にも言及されている。マスメディアがジャニーズ事務所を恐れ、批判を行わなかった結果、ジャニーズ側もまた「当該性加害の実態を調査することをはじめとして自浄能力を発揮することもなく、その隠蔽体質を強化していった」と、特別チームは断言している。

調査報告を受けて、NHKと民放キー局は、相次いでコメントを発表した。しかし、いずれも「沈黙に至った理由や経緯」には触れられていない。調査報告書が「メディアは取引関係の中でその影響力を行使することにより人権侵害を即時にやめさせるべきであったし、また、そうすることができたはずであった」と指摘しているのにもかかわらずだ。

結果的に「片棒」を担ぐこととなったメディア各社は、仮に経営体制が変更されたとしても、それで一件落着とするのではなく、視聴者や読者からの「なぜ正面から向き合わなかったのか」との問いに、今後もしっかり答える必要があるだろう。

相違点は「当事者が存命か」「有識者チームの位置づけ」

次に、相違点を考えてみよう。まずは「当事者が存命か」だ。加害者であるジャニー氏と、それを隠蔽したとされるメリー氏は、どちらもすでに鬼籍に入っている。そのため報告書では「メリー氏は、既に2021年に死去しているため、ジャニー氏の性加害について認識していたかどうかを直接確認することはできない」と前置きしながら、事実関係と状況証拠から全容解明を進めている。

一方のビッグモーターは、いまのところ旧経営陣が存命で、なおかつ前副社長は35歳とされる。「本人」が表舞台に出て、説明責任を果たすことも難しくない。こうした背景は、「後継者」であるジュリー氏と若干異なると感じる。

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