日本復活に大事なのは国民の覚悟と産業活力--『日本の突破口』を書いた中島厚志氏(経済産業研究所理事長)に聞く

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──精神作興になる?

その際にいくつかのポイントがある。過去の例を見ても、たとえば先進国はおしなべて第2次世界大戦を契機として戦後20年近く高成長をしている。この高成長への移行が自然だったかというと、そうではない。大戦を経て、あらゆる制度や枠組みが大きく変わった。日本はもちろんだが、大きく変わらざるをえない状況に追い込まれたときに、特に国は大きく成長する。

具体的には、今、財政再建をどうするか。このまま財政赤字を増やし続けるのは無理だ。歳出、歳入ともども、いろいろなことを組み合わせて改善する必要がある。今回の大震災で何十兆円という追加的な支出に対応しなければならないときに、国民が痛みを直接的に感じないで済む形はいかにもおかしい。むしろ国民の覚悟が問われている。

──電力制約が当面、覚悟と活力をそぎませんか。

電力制約が生産制約と同義にならないように、少しでも生産を抑えずに済む工夫が必要だ。生産の動きは電力の動きに連動している。

当然、電力制約に対して、生産をなるべく落とさない形での節電に努めることになる。その際、企業の生産コストへの影響は極力抑えるべきだ。節電効果があったとしても、その分企業コストが上がったり、生産量が落ちる仕掛けでは問題だ。エネルギー関連増税、電力料金引き上げなどはなるべく避ける。生産も、被災しなかった西日本で行う、あるいは操業時間をずらすなど、空間的、時間的な対策をうまく活用しながら、生産力を極力維持するように、政府、企業は配慮してほしいものだ。

──デフレも経済活力をそいでいます。

日本のデフレは、需要不足社会が底流となっている。大震災で電力が制約され、被災した地域も広いことから、供給力は落ちるが、需要はこれから復興需要が出てくれば上がる。供給が落ちて需要が上がる。経済はデフレ的からインフレ的に移ることになる。ただ、この状況は全国的に起こるのではない。地域差ばかりでなく。財によっても差が出る。若干インフレ的になるという表現がいいのかもしれない。

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