「村上春樹になりたい」…AIで一体どれだけ叶うか クリエイターは淘汰されてしまうのか、それとも?

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一方で、動画は画像を集めたコンテンツですから、1秒あたりのフレーム枚数が多ければ多いほど、時間が長ければ長いほど、コンピューターリソースを必要とします。そのため、私たちがふだん映画館やNetflixで観ているような、2時間ほどの作品全体を生成AIが生み出すような未来は、まだ少し先だと見ています。

けれども、画像の活用は積極的に進むでしょう。顕著なのはCGです。背景でCGを利用する流れは以前から浸透していますから、今後はそのような映画背景CGを人ではなく、生成AIが担う。そのような未来が描けるのではないでしょうか。

事例としては、韓国の大ヒット映画の背景の多くはCGで制作されています。『パラサイト』『イカゲーム』『愛の不時着』などがそうで、『愛の不時着』で登場する北朝鮮の平壌(ピョンヤン)の町並みは、CGで制作されていると言われています。CGやセット、ロケを適宜組み合わせるのは、もはや一般的な手法として認識されているでしょう。

主人公の2人が再会を果たす、スイスの雄大な自然のシーンは、さすがに実際に撮影しているようですが、再撮影を行った際はCGで代替えしたそうです。何度もスイスに行き撮影することは、予算、俳優のスケジュール、制作時間の観点からも難しいからでしょう。

一度撮影しておけば、後は生成AIが画像をデータとして学習し、近しい画像や別の時間帯の画像を生成してくれる。このような使い方が十分考えられます。『愛の不時着』が公開されたのは2019年で、2023年時点からすると3年以上前のことですから、すでに取り組んでいる作品があることは、十分考えられるのではないでしょうか。

オール生成AIで作られた背景の秀逸さ

すべて生成AIによる、CG背景の作品も登場しています。Netflixのショートムービー、『犬と少年』です。3分と短い作品ですが、富士山など、田舎の風景が時間帯や時代により変わるシーンが象徴的で、すべての背景を生成AIが作成しています。

なお『犬と少年』はNetflixの会員でなくとも、YouTubeで無料で観ることができますので、ぜひともご自身の目で、生成AIが生み出したCGのすごみを確認してもらえれば、と思います。

ハリウッド映画でも、以前からCGを使った作品は増える傾向にありますから、今後背景のCGがAIにより生成される流れは、一般的になるでしょう。

イメージとしては、生成AIがいくつかのパターンの背景CGを生成する。従来の伝統的なタッチから、最近の流行を反映したようなタッチを、といった具合です。監督や担当者はパターンをそれぞれ確認し、最適なCGを決定する。このような活用方法です。

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