農地のマーケットが次なるバブル候補だ--ロバート・J・ シラー 米イェール大学経済学部教授

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しかし、現在、農地には最も人々に感染しやすい“物語”が存在している。農地はブーム化しており、08年に価格のピークをつけている。この10年間で見ると、農地価格は実質ベースで74%上昇している。極めて感染性の高い地球温暖化の物語が食糧不足のシナリオに結び付き、世界中で土地価格の上昇を引き起こしているのだ。それが投資家の農地に対する関心をさらに高めることになるかもしれない。

人々は住宅市場と農地市場がつねに同一方向に動くと想像しがちである。00年以降、住宅と農地の価格はいずれも急騰しているからだ。ところが、1911年から2010年までの期間では、住宅価格と農地価格との間の年間実質上昇率の相関性はわずか5%にすぎない。最新のデータでは、農地価格は住宅価格ほど下落していない。10年の農地の実質価格は08年のピークと比べて5%下落しただけである。これに対して、06年にピークをつけた住宅の実質価格は37%も下落している。

住宅バブルは建設の供給ボトルネックが原因となり、投資需要の急速な拡大を満たすことができなかった。大量の住宅供給が始まると、住宅バブルははじけてしまった。これとは対照的に、農地は価格の上昇にもかかわらず、供給はまったく増えなかった。その結果、70年代のバブルと同じように、熱狂の感染を支える物語が機能し始めたのである。

バブルの発生を予測することは困難である。また投資家は、バブルの発生を見つけるだけでは十分ではない。投資先から資金を引き揚げ、ほかの市場に移す時期も決定しなければならないのである。

Robert J. Shiller
1946年生まれ。ミシガン大学卒業後、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号取得。株式市場の研究で知られ、2000年出版の『根拠なき熱狂』は世界的ベストセラーになった。ジョージ・A・アカロフとの共著に『アニマルスピリット』がある。

(週刊東洋経済2011年5月14日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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