「水曜どうでしょう」地方発"異例ヒット"の事情 チームの一体感が生む「大人の青春」の魅力

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そしていかなる場面でも発揮されるのが、いじられ適性の高さである。

いまや大物の域に入りつつあるといってもよさそうな大泉洋だが、バラエティ番組に出ればいまだにMCや共演者からいじられている。親しみやすさの証しではあるが、これほどいじられ続ける大物も珍しい。

そんないじられキャラぶりは、『どうでしょう』が始まったときからのものだ。どんな企画か知らされないまま収録がスタートするのが定番だったように、つねにどっきりを仕掛けられていたのが大泉洋だった。

そこでの大泉のリアクションがまた面白い。愚痴っぽくなったり、本気でキレたり、底力を発揮して驚異的な頑張りを見せたり。しかもそんなときでもいつもキュートさが漂うのが大泉洋の魅力である。そんないじられ上手なところは、テレビを心底楽しんでいるからでもあるだろう。テレビっ子で、テレビに夢中になりながら育ってきたのが想像できる。

結局、大泉洋は永遠の「弟キャラ」なのだ。生意気でついからかいたくなるが、不思議に愛嬌があり憎めない。むろん番組開始当初は年齢が若かったこともあるが、その立ち位置はその後もずっと変わっていない。風来坊のような飄々とした「寅さん」っぽいところもあるが、「弟キャラ」の感じはそれとも異なる。大泉洋は大泉洋以外の何者でもない。

番組の手作り感、一体感が生む“大人の青春”

とはいえ、『どうでしょう』の魅力は大泉洋個人に頼ったものではない。むしろ大泉の才能は、番組のコンセプト、共演者、スタッフとの関係のなかで開花したものだ。

番組の魅力としてはまず、先ほど書いたように予測不能な展開がもたらす笑いと感動がある。まさに筋書きのないドラマといったところ。なにがどう転ぶかわからないなかで、なかなかテレビでは見られない演者の素の姿がさらされ、後々語り継がれる“伝説”や“名言”が数多く生まれてきた。

地上波放送に先駆けて開催した前代未聞のライブ・ビューイング“最新作先行上映会”の様子。4人が登場したのはユナイテッド・シネマ札幌(写真:ⒸHTB/プレスリリースより)

それは、いつの時代も変わらぬテレビの本質的魅力だ。令和のいまも、そうした意外性の面白さが『どうでしょう』の強みであることは間違いない。

しかし、それだけではない。『どうでしょう』がここまで長くファンを惹きつけるもうひとつの理由として、番組の手作り感、そしてそこに醸し出されるチームとしての一体感があるだろう。

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